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菌類の種構成の違いが枯死木の分解速度に影響する

2015年12月24日掲載

論文名

Relationship between the Decomposition Process of Coarse Woody Debris and Fungal Community Structure as Detected by High-Throughput Sequencing in a Deciduous Broad-Leaved Forest in Japan (日本の広葉樹林における粗木材片の分解過程と大量シーケンスにより検出された菌類群集との関係)

著者(所属)

山下 聡(徳島大学)、升屋 勇人(東北支所)、阿部 真・正木 隆(森林植生研究領域)、岡部 貴美子(森林昆虫研究領域)

掲載誌

PLoS ONE 10(6): e0131510.DOI:10.1371/journal.pone.0131510(外部サイトへリンク) 2015年6月オンライン

内容紹介

生物多様性が急速に損なわれるのにともなって生態系サービスの低下が危惧されていますが、実際に生物多様性と生態系サービスの関係については十分に明らかになっていません。特に森林における生物多様性が、炭素循環の要ともいえる枯死木の分解にどのような影響を与えるかを知ることは、森林における生物多様性の機能と保全を考える上で大変重要です。

13年間にわたる長期森林動態調査から得られた枯死木の分解過程のデータと、各枯死木から抽出したDNAに基づく菌類の群集構造(種数と種の出現頻度)との関係を解析しました。その結果、枯死後の経過年数にともなって菌類の種数に大きな変化はなかったものの、菌類の種構成が、分解が進むとともに変化することが分かりました。そして、特にブナでは種構成の変化と分解の程度に相関が認められたことから、菌類の群集構造の変化が分解速度に影響を及ぼすことが分かりました。

森林生態系における分解と分解者群集の関係を、森林の長期動態データとDNA解析技術を用いて実際に評価することができました。菌類の群集構造を把握することが森林生態系における生物多様性の機能評価に活用できると期待されます。

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