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ヒバ稚樹の横枝は、暗さに耐えて生き延びるのに役立っている

2016年1月6日掲載

論文名

Orthotropic lateral branches contribute to shade tolerance and survival of Thujopsis dolabrata var. hondai saplings by altering crown architecture and promoting layering (樹冠構造の改変と伏条繁殖の促進によって耐陰性と長寿に寄与するヒバの上向き枝)

著者(所属)

櫃間 岳(森林植生研究領域)、森澤 猛(企画部研究情報科)、八木橋 勉(東北支所育林技術研究グループ)

掲載誌

Botany 93 353-360. DOI:10.1139/cjb-2014-0237(外部サイトへリンク)

内容紹介

ヒバは北東北を代表する樹種のひとつで、天然林の択伐施業によって管理されてきましたが、ヒバ林内の更新稚樹を増やし、低下した資源量を回復させることが課題となっています。ヒバの稚樹は耐陰性が高く暗い林床でも長く生きることが知られていますが、その実態はよく分かっていませんでした。

暗い林内のヒバ稚樹の樹形は、上向きに湾曲した枝が幹の先端よりも高く上がり、稚樹の外見は頭頂部が凹んだパラボラアンテナのような形です。一般に針葉樹は通直な幹と横に伸びる枝を持ち、幹の先端を頂点とする円錐型の樹形になりますが、ヒバ稚樹はまったく異なる個性的な樹形をしています。林内で稚樹でいる間は、幹をあまり上に伸ばさず、枝で葉を広げて支えるこの生き方は、余分な資源を使わずに光を集めて耐えるのに有利なほか、枝が雪などで地面に押さえつけられたときに接地して発根し、新たな稚樹となって増殖することに役立っていることも分かりました。暗い林床では、上に高く伸びるよりも低いまま横に広がって幹(稚樹)の数を増やせるこの生き方は、積雪が多く、暗い林内を生きながらえるのに有利だと考えられます。

本研究で明らかにしたヒバ稚樹の生態は、自然力を活かして次世代のヒバの定着と成長を促し、資源量を回復させる技術の開発に応用されることが期待されます。

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