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2016年10月13日掲載
論文名 |
Land abandonment andchanges in snow-cover period accelerate range expansions of sika deer.(居住域の縮小と積雪期間の変化はニホンジカの分布拡大を促進する) |
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著者(所属) |
大橋 春香(国際連携・気候変動研究拠点)、小南 裕志(関西支所)、比嘉 基紀(高知大学)、小出 大(国立環境研究所)、中尾 勝洋(関西支所)、津山 幾太郎(北海道支所)、松井 哲哉(国際連携・気候変動研究拠点)、田中 信行(東京農業大学) |
掲載誌 |
Ecology and Evolution、October 2016、DOI:10.1002/ece3.2514(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
ニホンジカ(以下、シカ)の分布域は1978年時点に国土の27.7%(973万ha)でしたが、2003年には47.9%へと1.7倍に増加しました。生息域の急激な拡大にともない、各地で農林業被害や生態系への影響が問題となっており、今後新たな分布域になる可能性が高い地域では、将来の被害防止に備えた早期の対策が急務となっています。 このたび、人の居住域と積雪期間の変化が1978年と2003年のシカの分布の違いに及ぼした影響を定量的に分析し、過去25年間で人の居住域が拡大した地域はシカにとって棲みにくい環境になった一方で、積雪期間が減少した地域はシカにとって棲みやすい環境になったことが明らかになりました。また、今後100年間、現在と同じ環境が維持された場合(現状維持シナリオ)であっても、2103年にはシカの生息域が国土の8割以上にまで拡大すると予測されました。さらに、人口減少にともなう居住域の縮小が進み、温暖化の進行により積雪期間が減少した場合(人口減少+温暖化シナリオ)、現在シカがほとんど生息していない多雪地域や過疎地域でもシカが生息するようになり、2103年にはシカの生息域が国土の9割以上にまで拡大すると予測されました。 この成果は、今後の温暖化の進行に適応するためには分布の拡大が予想される地域において重点的にモニタリング調査を行い、対策の体制を整備することが重要であることを示しています。
注)解析は島嶼部を除いて行った。 |
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