ホーム > 研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2017年紹介分 > 森林内の放射性セシウム濃度は斜面の向きによって違っていた ―コナラの落葉を用いた検証―
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2017年3月9日掲載
論文名 |
コナラ落葉に含まれる放射性セシウムの空間分布に斜面方位と落葉量が与える影響 |
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著者(所属) |
直江 将司(森林植生研究領域、現所属:東北支所)、阿部 真(森林植生研究領域)、田中 浩(研究担当理事)、赤間 亮夫(震災復興・放射性物質研究拠点)、高野 勉(震災復興・放射性物質研究拠点、現所属:企画部研究情報科)、山崎 良啓(京都大学)、藤津 亜季子(東京農工大学)、原澤 翔太(京都大学)、正木 隆(森林植生研究領域) |
掲載誌 |
日本森林学会誌、99巻1号、日本森林学会、2017年2月 |
内容紹介 |
東京電力福島第一原子力発電所の事故では、放射性セシウムの拡散により周辺の森林も影響を受けました。これまでに放射性物質の森林外への流出は非常に少ないことが分かっており、放射性物質の森林内での動態が注目されています。しかし、森林内においてどのような場所に放射性物質が多く蓄積しているか調べた研究はあまり行われていません。 そこで私たちは放射性セシウムの空間分布の実態を調べ、その分布に影響している要因を検討しました。茨城県北端の落葉広葉樹林内に落葉を回収するためのトラップを等間隔で設置し、落葉広葉樹コナラの落葉の放射性セシウム濃度を測定しました。その結果、東向き斜面の落葉の放射性セシウム濃度は西向き斜面の落葉のものよりも高いことなどが明らかになりました。この原因としては、原発事故時に調査地付近では東風が吹いており、放射性セシウムを大量に含む風が東向きの斜面にぶつかり、その際に樹木に付着した放射性セシウムが当年の新葉に転流した可能性が考えられました。 本研究ではコナラ落葉の放射性セシウム濃度を手がかりに、森林内の放射性セシウムの空間分布の偏りと、その要因を明らかにしました。コナラの落葉で見られたパターンを主要な樹木種や土壌などでも検証していくことで、森林内での放射性セシウム動態への理解を深め、より信頼性の高い将来予測に役立てていきます。
写真:樹上からの落葉を回収するためのトラップ(開口部0.5m2)。林内1haに14m間隔で61個設置しました。
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