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ニホンミツバチの各種殺虫剤への感受性が明らかに ―毒性試験方法を確立―

2017年9月13日掲載

論文名

(1)Insecticide Susceptibility in Asian honey bees (Apis cerana (Hymenoptera: Apidae)) and Implications for Wild Honey Bees in Asia(トウヨウミツバチにおける殺虫剤感受性と野生ミツバチへの示唆)

(2)Acute contact toxicity of three insecticides on Asian honeybees Apis cerana(トウヨウミツバチに対する3薬剤の急性経皮毒性)

著者(所属)

(1)安田 美香(元森林総研特別研究員)、坂本 佳子・五箇 公一(国立環境研究所)、永光 輝義(北海道支所)、滝 久智(森林昆虫研究領域)

(2)安田 美香(元森林総研特別研究員)、前田 太郎(農研機構 生物機能利用研究部門)、滝 久智(森林昆虫研究領域)

掲載誌

(1)Journal of Economic Entomology 110、447-452、April 2017 DOI:10.1093/jee/tox032(外部サイトへリンク)

(2)Bulletin of the Forestry and Forest Products Research Institute. Vol.16 No.3 (No.443) 143-146 September 2017

内容紹介

ミツバチはミツバチ属に属する昆虫の一群です。ミツバチは植物の花粉を媒介し、養蜂や採蜜に使われるため生態学的にも経済的にも非常に重要な昆虫ですが、最近、ネオニコチノイド系殺虫剤による様々な影響が懸念されており、世界各地で様々な研究が進められています。しかし、それらの多くは飼育されているセイヨウミツバチを用いたもので、アジアに広域分布するトウヨウミツバチ(ニホンミツバチはその亜種)を含む野生ミツバチへの影響には不明な点が数多く残っています。

本研究では、試験に用いるニホンミツバチの成虫になってからの期間を調整することにより、急性毒性試験を実施できる専用の方法を開発することに成功しました。本方法を用いて、ネオニコチノイド系、フェニルピラゾール系、ジアミド系、有機リン系、ピレスロイド系、カーバメート系の14種類の殺虫剤を対象にした試験を行いました。その結果、投与した生物の半数が死亡する用量であるLD50値(注1)はセイヨウミツバチよりも小さく、ニホンミツバチはセイヨウミツバチよりも低濃度の殺虫剤で死ぬことが明らかになりました。さらに、ネオニコチノイド系薬剤5種のLD50値には、最大で200倍もの違いがみられ、同じ系統の中でも薬剤による違いが大きいことが分かりました。

これらの結果は、殺虫剤のリスク管理において、野生ミツバチにはセイヨウミツバチとは異なる方法が必要であることを示すとともに、同系統の殺虫剤を全て同一として扱わない方が良いことを示唆しています。

(注1)LD50:半数致死量(Lethal Dose 50%)のこと。薬剤などの急性毒性の指標で、投与した生物の半数が死亡する用量を示す。今回は48時間後に50%が死亡する量。


写真:ニホンミツバチの試験個体の背面に対象殺虫剤を投与する様子

写真:ニホンミツバチの試験個体の背面に対象殺虫剤を投与する様子

 

表:ニホンミツバチとセイヨウミツバチに対する各種殺虫剤のLD50値(48時間後)

表:ニホンミツバチとセイヨウミツバチに対する各種殺虫剤のLD50値

* セイヨウミツバチの値は既存報告から入手。
** フルベンジアミドは100μg/beeを投与しても死亡個体が確認されずLD50値は未解明。

 

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