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2018年3月2日掲載
論文名 |
Distribution of radiocesium in different density fractions of temperate forest soils in Fukushima (福島の温帯林土壌の比重画分における放射性セシウムの分布) |
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著者(所属) |
鳥山 淳平(九州支所)、小林 政広(立地環境研究領域)、蛭田 利秀(元福島県林業研究センター)、志知 幸治(四国支所) |
掲載誌 |
Forest Ecology and Management、409:260–266、February 2018、DOI:10.1016/j.foreco.2017.11.024(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
原発事故により半減期が長い放射性セシウムに汚染された森林の利用再開は、地域にとって重要な問題です。将来的な森林の利用計画を立てるためには、放射性セシウムが現在の森林のどの部分に多く集まり、どれほど安定しているかということを知る必要があります。これまで多くの観測結果から、森林に飛散した放射性セシウムは、時間の経過とともに土壌の表層部分に集まってきていることが明らかになっていますが、そのメカニズムはよく分かっていません。一方、森林の土壌には有機物や鉱物など、様々な形態の粒子が含まれていますが、放射性セシウムがどのタイプの粒子に多く捉えられているか詳しく調べた例はこれまでありませんでした。 このため我々は、土壌粒子のもつ比重の違いに着目し、森林土壌を主に植物遺体に由来する軽い粒子と、鉱物に由来する重い粒子に分け、それぞれの粒子に含まれる放射性セシウムの濃度と量を測定しました。2012-2014年にかけて福島県内の森林で採取された土壌試料の結果から、表土に多く存在する有機質の軽い粒子(比重1.6未満)は、鉱物質の重い粒子より約8倍も高い放射性セシウム濃度を持つこと、さらに重量の割合では1割程度しかない軽い粒子に、表土全体の4割もの放射性セシウムが含まれることが明らかになりました。この結果は、森林土壌では落葉等による細かく砕けた軽い有機物の粒子が放射性セシウムを表土に留める役割が大きいことを示しています。 土壌中の有機物が放射性セシウムを森林内に留める働きを持つことを明らかにした今回の成果は、今後福島の森林を利用する上で表層土壌の保全が重要なことを示しています。また、軽い粒子への放射性セシウムの集中は、流域における放射性物質の移動過程を考えるうえで非常に重要な知見となります。
写真:調査地である福島県内の森林。
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