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雨滴のサイズから明らかとなった森林の中で降る雨の違い

2019年4月26日掲載

論文名

Throughfall partitioning by trees. (樹木による樹冠通過雨の分離)

著者(所属)

Delphis F. Levia*(University of Delaware)、南光 一樹*(森林防災研究領域)、尼崎 博正(京都造形芸術大学)、Thomas W. Giambelluca(University of Hawai‘i at Mānoa)、堀田 紀文(東京大学)、飯田 真一(森林防災研究領域)、Ryan G. Mudd・Michael A. Nullet(University of Hawai‘i at Mānoa)、酒井 直樹(防災科学技術研究所)、篠原 慶規(宮崎大学)、Xinchao Sun(Tianjin University)、鈴木 雅一・田中 延亮(東京大学)、Chatchai Tantasirin(Kasetsart University)、山田 耕三(京都造形芸術大学/花豊造園株式会社)
*最初の2人の著者はこの論文に同等の貢献をした。1番目と2番目の順番を区別しない。

掲載誌

Hydrological Processes, March 2019 DOI:10.1002/hyp.13432(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林に降った雨は樹冠を濡らし、その大半(50~80%)は樹冠通過雨として地面に降り注ぎ地中に浸透していきます。樹冠通過雨は、葉や枝に触れずにそのまま落ちる「直達雨」、葉や枝に溜まった後に大粒となって落ちる「滴下雨」、葉や枝で弾けて砕けて小粒となって落ちる「飛沫雨」の3つからできています。バケツなどの入れ物や雨量計を設置すればその総量を知ることはできましたが、各成分がどれくらいの割合で存在しているのかは不明なままでした。

そこで、樹冠通過雨の3成分の雨滴の大きさの特徴が違うことに着目し、林内と林外で同時に取得した雨滴データを使って樹冠通過雨の成分比を決める手法を開発しました。日本、アメリカ、タイの3カ国の12樹種で取得した1億粒以上の樹冠通過雨の雨滴データを解析しました。その結果、葉のついた樹木では樹冠通過雨の半分以上は滴下成分からできていること、落葉した広葉樹<葉のついた針葉樹<葉のついた広葉樹、の順に滴下成分の割合が大きくなること、針葉樹の方が広葉樹よりも飛沫成分の割合が大きいことを明らかにしました。

これは針葉樹と広葉樹とで、樹冠通過後の雨の様相が異なることを意味しています。大きな粒の雨がどれくらい降るかにより、落ち葉の分解されやすさ、土壌の侵食されやすさ、雨水の浸透しやすさが変わってきます。この手法を活用して針葉樹林と広葉樹林とでの森林内の水の動きの違いを明らかにし、水源かん養機能や表土保持機能をよりよく発揮するための森林管理技術の開発に役立てていきます。

(本研究は2019年3月8日にHydrological Processes誌にオンライン公表されました。)

 

図 雨滴の大きさによる樹冠通過雨の成分分離と樹木のタイプ毎の違い

図 雨滴の大きさによる樹冠通過雨の成分分離と樹木のタイプ毎の違い。

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