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海岸クロマツの津波に対する耐性を推定

2019年5月10日掲載

論文名

Mechanical properties of Japanese black pine (Pinus thunbergii Parl.) planted on coastal sand dunes: resistance to uprooting and stem breakage by tsunamis. (海岸砂丘に植栽されたクロマツの力学特性:津波に対する根返りと幹折れの抵抗)

著者(所属)

南光 一樹・鈴木 覚(森林防災研究領域)、野口 宏典(東北支所)、石田 洋二(石川県農林総合研究センター)、Delphis F Levia (University of Delaware)、小倉 晃(石川県県央農林総合事務所)、萩野 裕章(東北支所)、松元 浩(石川県農林総合研究センター)、滝本 裕美(石川県南加賀農林総合事務所)、坂本 知己(森林防災研究領域)

掲載誌

Wood Science and Technology、53(2):469-489、March 2019 DOI:10.1007/s00226-019-01078-z(外部サイトへリンク)

内容紹介

クロマツは日本の海岸林を構成する主要樹種です。海岸林の津波減災効果を評価するには、津波に対するクロマツの破壊抵抗を知る必要があります。樹木の破壊は、主に根返りと幹折れの2つに分類されますが、これまでの研究では直径が小さなクロマツの根返り抵抗しか調べられておらず、幹折れに対する抵抗(幹の破壊強度)についてもほとんど調べられていませんでした。

そこで、胸高直径20cm以上のクロマツを対象に、現地での立木の引き倒し試験、室内での丸太の曲げ破壊試験を行い、クロマツの根返りや幹折れに対する抵抗力を推定する式を作りました。そしてクロマツ立木に津波を当てる計算を行い、クロマツが耐えられる限界の津波の高さを求めました。その結果、海岸砂丘に植栽されたクロマツでは幹折れよりも根返りが起こりやすいことがわかりました。更に、樹高が大きく、根元が太く、根鉢が深いクロマツほど、津波に強くなることを示しました。樹高10mのクロマツは高さ3~4mまでの津波なら耐えられます。

現在は、海岸林に期待する機能によりどのような海岸林を作るかという管理技術の開発が求められています。この結果は、より津波に強い海岸クロマツ林を作るための森林管理の手引きに活用されます。

(本研究は2019年2月15日にWood Science and Technology誌にオンライン公表されました。)

 

写真1:丸太の曲げ破壊試験の様子(試験前) 写真2:丸太の曲げ破壊試験の様子(試験後)

写真:丸太の曲げ破壊試験の様子(長さ3.6m、中央太さ14cmのクロマツ丸太の例)。左は試験前、右は試験後。幹の曲がり方とかけた力から、クロマツ丸太のヤング率(=しなりにくさ)と曲げ強度を求める。

お問い合わせ先
【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 森林防災研究領域 南光 一樹
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
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