研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2019年紹介分 > ツキノワグマが起伏や農地を避けていることを遺伝解析で明らかに
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2019年7月19日掲載
論文名 |
Landscape heterogeneity in landform and land use provides functional resistance to gene flow in continuous Asian black bear populations.(地形と土地利用に関する景観的異質性は連続したツキノワグマ個体群の遺伝子流動に抵抗として機能する) |
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著者(所属) |
大西 尚樹(東北支所)、大澤 剛士(首都大学東京)、山本 俊昭(日本獣医畜産大学)、鵜野 レイナ(慶応大学) |
掲載誌 |
Ecology and Evolution、9(8):4958-4968、Wiley、April 2019 DOI:10.1002/ece3.5102(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
野生動物個体群の遺伝的な違いは様々な種・地域で研究されてきており、地域間の遺伝的交流の程度や個体の移出入の頻度などが推定されています。ツキノワグマは地理的に孤立した個体群のみならず、連続する個体群においても遺伝的な違いが大きいことが先行研究により示されてきました。そこで、このような違いをもたらす景観的な要素について検討しました。 地形(標高)の影響について解析した結果、クマが生息している標高自体に影響はなく、標高差が大きかったり起伏が多かったりした際に、遺伝的交流が妨げられていることがわかりました。次に、土地利用について解析した結果、住宅地と農地が遺伝的交流を妨げていることがわかりました。とくに農地は、森林にくらべてオスでは5倍、メスでは100倍もの強い抵抗(遺伝的交流を妨げる強さ)となっていました。また、自然裸地や湿地などもメスにとっては抵抗が大きいことがわかりました。 近年、クマの人里への出没が全国で相次いでいます。その対策として、動物と人間の生息圏を分けて考えるゾーニング管理が提唱されるようになってきました。人間の生息圏の境界付近に動物にとっての抵抗となる景観的な要素を配置することも有効であると考えられます。 (本研究は2019年4月5日にEcology and Evolution誌にオンライン公表されました。)
図:オス(左)・メス(右)の土地利用抵抗マップ (小川ら 2013 を基に作図)
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写真:ツキノワグマの親子(撮影:佐藤嘉宏さん) |
お問い合わせ先 |
【研究推進責任者】 森林総合研究所 研究ディレクター 尾崎 研一 【研究担当者】 森林総合研究所 東北支所 大西 尚樹 【広報担当者】 森林総合研究所 広報普及科広報係 【取材等のお問い合わせ】 相談窓口(Q&A)E-mail:QandA@ffpri.affrc.go.jp 電話番号:029-829-8377(受付時間:平日9時30分~12時、13時~16時30分) |
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