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農林業害虫クロバネキノコバエ類の学名を整理し、互いの区別点を明らかにしました

2019年8月5日掲載

論文名

Pest species of a fungus gnat genus Bradysia Winnertz (Diptera: Sciaridae) injuring agricultural and forestry products in Japan, with a review on taxonomy of allied species (農林作物を加害する属Bradysia(双翅目クロバネキノコバエ科)の害虫種および近縁種の分類)

著者(所属)

末吉 昌宏(生物多様性研究拠点)、吉松 慎一(農業・食品産業技術総合研究機構)

掲載誌

Entomological Science、Wiley、July 2019 DOI:10.1111/ens.12373(外部サイトへリンク)

内容紹介

小さな蚊のような昆虫であるクロバネキノコバエ類が各種農作物や食用きのこ類を食害したり、包装パックに紛れ込んだりする被害を引き起こしており、それぞれの種に対する有効な防除・対策が望まれています。害虫種としてチバクロバネキノコバエ(以下チバ)(図a;体長1~2mm)などが知られており、これらは時に同一種として扱われたり、チバに様々な学名が適用されたりしてきました。そのため、防除方法が複数必要か、現場でどれを適用するかなど、多くの問題や混乱が生じています。そこで、チバおよびこれらと近縁な種の分類を再検討しました。その結果、チバの学名としてB. impatiensを用いることが妥当であると結論しました。また、食用きのこ類の害虫とされるB. pauperaB. impatiensと♂交尾器などの形態(図c,d)が異なることが明らかになり、チバとは別種として区別し、和名シイタケクロバネキノコバエ(以下シイタケ)を新たに提唱しました。また、近年国内で知られるようになり、チバとしばしば混発しているネギネクロバネキノコバエ(以下ネギネ)の学名にB. odoriphagaを適用し、チバとシイタケから明確に区別する形態的特徴(図c-e)を明らかにしました。これらの成果により、今後は生産現場に発生したクロバネキノコバエ類の種類に応じた防除技術を開発・適用することが可能になりました。本研究の成果は農林水産省委託事業「クロバネキノコバエ科の一種の総合的防除体系の確立と実証」(H29〜R1年度)により得られました。

(本研究は2019年7月30日にEntomological Science誌にオンライン公表されました。)

 

図:チバの♂成虫と♂交尾器、シイタケとネギネの♂交尾器生殖端節先端の形状

図:チバクロバネキノコバエ(チバ)の♂成虫(a)と♂交尾器(b)、シイタケクロバネキノコバエ(シイタケ)とネギネクロバネキノコバエ(ネギネ)の♂交尾器生殖端節先端(c-e)の形状。矢印の小突起の位置がチバ(c)とシイタケ(d)では生殖端節の先端にあるが、ネギネ(e)は生殖端節の外側にある。また、生殖端節先端がシイタケ(d)でほっそりとして強剛毛(赤丸内の太い剛毛)が4本であるのに対し、チバ(c)とネギネ(e)で太く、強剛毛(赤丸内の太い剛毛)が5本以上である。

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