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2020年3月4日掲載
論文名 |
Different contributions of birds and mammals to seed dispersal of a fleshy-fruited tree(鳥類と哺乳類の液果樹木種子散布における異なる貢献) |
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著者(所属) |
綱本 良啓(森林総研PD、東北支所)、直江 将司(東北支所)、正木 隆(企画部)、井鷺 裕司(京都大学) |
掲載誌 |
Basic and Applied Ecology, 43,66-75, Elsevier,2020年3月 DOI:10.1016/j.baae.2019.07.005(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
鳥類や哺乳類の多くは、樹木の果実を食べて種子を排出することで種子を散布し、樹木の世代交代や分布拡大を助けています。しかし、森林内でこうした果実食性の動物の行動を直接調べるのは難しく、どのように種子を散布しているかはよくわかっていませんでした。 今回、鳥類と哺乳類の両方に果実が食べられるミズキを対象に、2種類の遺伝解析技術を用いて調べたところ、果実食性動物の役割を種レベルで明らかにすることに成功しました。まず種子のDNA塩基配列から種子の母親を特定し、種子と母親の位置から種子散布距離を求めました(マイクロサテライト分析)。次に、種子が入っていた糞のDNA塩基配列をデータベースと照合し、種子を散布した動物を特定しました(DNAバーコーディング)。その結果、ミズキの種子を散布した鳥類(小型・中型鳥類のツグミ類、アオバトなど)は、どの種も散布距離が短く(平均13m)、多くの種子を樹冠の真下に落としていました。一方、哺乳類(中型哺乳類のアナグマ、タヌキ)は、散布距離が長くなっていました(平均127m)。これらの結果は、小型・中型鳥類は樹木のその場での更新に役立ち、中型哺乳類はおもに樹木の分布拡大を助けていることを示唆しています。 こうした動物ごとの種子散布者としての役割を明らかにすることは、とくに動物に散布される樹木が多い温帯林や熱帯林を適切に管理する上で有用な情報となります。 (本研究は2020年3月にBasic and Applied Ecology誌にオンライン公表されました。)
図:鳥類と哺乳類で種子を運ぶ距離は大きく異なる。
写真:種子を集めるために設置したトラップ。 |
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