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2020年3月13日掲載
論文名 |
Impact of the spatial uncertainty of seed dispersal on tree colonization dynamics in a temperate forest(種子散布の空間不確実性が温帯林の樹木更新プロセスに与える影響) |
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著者(所属) |
正木 隆(企画部)、中静 透(総合地球環境学研究所)、新山 馨(森林植生研究領域)、田中 浩(理事)、飯田 滋生(九州支所)、James M. Bullock(NERC Centre for Ecology and Hydrology)、直江 将司(東北支所) |
掲載誌 |
Oikos、128(12):1816-1828、December 2019 DOI:10.1111/oik.06236(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
森林伐採後の天然更新がうまくいくかどうかは、その場所に種子がどれだけ届いているかに左右されます。そこで、多種多様な樹木が生育する落葉広葉樹林に種子トラップをたくさん並べてその中に入った種子を数え、種子数と母樹からの距離の関係を分析しました。 種子には、風に乗って飛んでいくもの(カンバ(ミズメ)、シデ、カエデなど)、鳥などに飲みこまれて運ばれるもの(ミズキなど)、母樹からポトンと落ちるもの(コナラなど)などいくつかのタイプがありましたが、いずれも母樹から約30m以内に集中していました。樹種の特徴を比べるために、平方メートルあたり1粒以上の種子が届く最大距離を計算したところ、カエデやシデは60m~80m、カンバやミズキは30~50m、コナラは約15mと推定されました。一般に、カンバの種子はヒラヒラと遠くまで漂い、ミズキの種子は飲み込んだ鳥が遠くまで飛んでいくイメージがありますが、それとは裏腹に種子が届く距離は意外と短いものでした。 以上の結果は、種子源となる広葉樹林が30m以内にあれば人工林の広葉樹林化が成功しやすい、といった従来の経験則を裏付けるものです。また、本研究によって、種子の届く距離が樹種によって異なることも示されました。こういった情報を取り入れることで、より緻密な天然更新の計画をたてることが可能になります。 (本研究は2019年8月8日にOikos誌にオンライン公表されました。)
図:本研究の結果に基づき、1本の母樹からの距離にともなう落下種子数の予測値(ミズメの距離0mにおける種子数は約5400粒)を示しました。下段は拡大図で、各曲線と平方メートルあたり1粒の種子を表す点線との交点を種子が届く「最大距離」としました。
写真:調査した森林に種子トラップを一定間隔で格子状に配置し、その中に入った種子を数えました。 |
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