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複層林を健全に維持していくことは極めて難しい

2020年3月30日掲載

論文名

集約的に管理されたスギ高齢複層林における植栽木の成長の健全性評価

著者(所属)

宮本 和樹(森林植生研究領域)、大谷 達也(四国支所)、酒井 敦(東北支所)、酒井 武(森林植生研究領域)、奥田 史郎(植物生態研究領域)

掲載誌

森林総合研究所研究報告、19巻1号、45-53、森林総合研究所、2020年3月

内容紹介

スギやヒノキの人工林を一部伐採し、その下にスギやヒノキを植栽して下層や中層といった複数の階層を形成するような人工林を複層林とよびます。複層林は皆伐後に大面積の裸地ができないという利点がある一方で、上層木の伐採時に下層木が損傷することや、下層木へ十分に光が届かず生育状態が悪くなるなどの問題点が指摘されていました。これに加えて、上層木が100年生以上の高齢複層林において植栽した木の成長経過についてはよくわかっていませんでした。

私たちは上層木が110年生以上のスギ複層林で、植栽されて30年以上が経過する中層木と下層木の最近16年間の成長経過を調べました。その結果、上層木とそのすぐ下の中層木では8mm/年と高い直径成長速度が確認されました。一方、下層木では直径成長が2.5mm/年と抑制されているために形状比注1)が100を超え(細長い形状)、冠雪害などの気象害が懸念されました。

この複層林では長年にわたり、所有者が一本一本の木を丁寧に観察して保育・管理をおこなってきました。このような複層林でさえ、下層木の生育を健全に保つことは極めて難しいことが示されました。この結果は、高齢人工林の管理を考えるための新たな科学的知見となり、地域における長期間の森林管理を考えていく上で活用が期待されます。

注1) 樹高(cm)/直径(cm)で示される幹の形状を示す指標。70以上で気象害を受けやすいとされる。

 

(本研究は2020年3月に森林総合研究所研究報告に公表されました。)

 

写真1:高齢複層林の林内の様子

写真1:高齢複層林の林内の様子。下層の植栽木は細長く、気象害が懸念される。

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