研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > マツ枯れ被害対策に役立つ高解像度リスクマップの作成
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2020年4月14日掲載
論文名 |
Developing a point process model for ecological risk assessment of pine wilt disease at multiple scales(地域から全国まで共通して使えるマツ枯れリスク評価のための統計モデルの構築) |
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著者(所属) |
松橋 彩衣子(農研機構中央農業研究センター、元国際連携・気候変動研究拠点)、平田 晶子(国立環境研究所)、秋庭 満輝(きのこ・森林微生物研究領域)、中村 克典(東北支所)、小黒 芳生(森林植生研究領域)、髙野 宏平(長野県環境保全研究所)、中尾 勝洋(関西支所)、肱岡 靖明(国立環境研究所)、松井 哲哉(国際連携・気候変動研究拠点) |
掲載誌 |
Forest Ecology and Management、463巻、118010番、エルゼビア社、2020年3月発行 DOI:10.1016/j.foreco.2020.118010(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
日本のマツ林に深刻な被害をもたらしてきたマツ材線虫病(以下、マツ枯れ)は、北海道を除く46都府県に広がっています。マツ枯れ被害への対策を長期にわたって効果的に進めるためには、被害リスクの高い地域を高解像度かつ高精度で特定することが有効です。 このたび、最新の統計学的手法を用いて、全国のマツ枯れ被害リスクマップ(以下、リスクマップ)をメッシュサイズ1km×1kmの高解像度で作成しました(図1)。それによると、マツ枯れ被害のリスクが最も高いレベル5の地域(高リスク域)は、現在の集団的な被害の北限とされる青森~秋田県境地域よりも北の地域や、本州内陸部の標高800~1,000m付近にまで広がっていました。このことは、すでに被害が広がっている地域に加え、被害報告が比較的少ない冷涼な地域や高標高地のマツ林であっても、集団的な被害を受ける可能性があることを意味します。さらに、近未来(2026-2050年)の温暖化した気候シナリオ条件下では、高リスク域の面積は今より最大で6割拡大する可能性があることがわかりました。 今回公表したリスクマップは、拡大する被害の先端地域におけるマツの保全対策や国内各地に存在する重要マツ林の管理計画、さらには気候変動で生じる森林病害虫被害リスクに対する適応策の立案などに活用できます。
(本研究は2020年3月にForest Ecology and Management誌にオンライン公表されました。)
図1:気温、降水量およびマツ枯れ発生地点情報にもとづき予測した現在のマツ枯れリスク域の水平分布と垂直分布。レベル1は、マツ枯れの発生する可能性が低い地域であり、レベル5は、マツ枯れが大発生する可能性が高い地域です。各レベルの垂直分布は、北へ行くほど寒くなるため上限標高が低下する傾向にあります。(https://doi.org/10.1016/j.foreco.2020.118010(外部サイトへリンク)から一部を掲載) |
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