研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 森林の持つ高い濁水ろ過機能も土壌の目詰まりで機能が低下する
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2020年5月8日掲載
論文名 |
東北地方の落葉広葉樹林とスギ林における野外濁水ろ過実験 |
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著者(所属) |
阿部 俊夫(東北支所)、岡本 隆(森林防災研究領域)、篠宮 佳樹(震災復興・放射性物質研究拠点) |
掲載誌 |
東北森林科学会誌 25巻1号、東北森林科学会、2020年3月 |
内容紹介 |
川の水が極端に濁ると、水道水の水質や水生生物の生息に悪影響を及ぼします。特に水源地にあたる山地で崩壊や森林伐採などで地表がかく乱されると、降雨時に非常に濁った水が流出するため、濁水が川に直接流れ込まないよう森林内でろ過することが期待されています。そこで、岩手県内の落葉広葉樹林(ナラ林)とスギ林の斜面で人工的に濁水を流す実験を行い、それぞれの土壌や落葉層による濁水ろ過機能がどう変化するのか調べてみました。 最初の実験を開始した9月には、ろ過機能は極めて高く、濁水に含まれる微細土砂の90%以上がろ過されました。しかし、その後10月や11月に実験を繰り返すと、土壌の表層に微細土砂が溜まって隙間が目詰まりすることで、ろ過機能は徐々に低下することが分かりました。冬を挟んだ約半年後の翌年6月に実験すると、ろ過機能がわずかに回復する傾向も見られましたが、ろ過機能が大きく低下してしまうと回復には長い時間が必要なことが分かりました。また、水が浸透する速度が大きい土壌ほど、濁水ろ過機能は高い傾向がみられ、同じ時間に同じ面積の森林で濁水をろ過できる速度は、土壌へ水が浸透する速度の関数(2次の多項式)で表すことができました。このことから、水の浸透速度を計測するだけで、ろ過機能の相対的な優劣を評価できる可能性が示されました。 今回の結果は、森林の濁水ろ過機能は極めて高いものの、同じ箇所に短い間隔で何度も濁水が流れ込むと、ろ過しきれない恐れがあることを示唆しており、樹林帯による濁水の流出防止対策を考える際には、この点に注意する必要があります。
(本研究は2020年3月に東北森林科学会誌に公表されました。)
写真1:落葉広葉樹林での濁水ろ過実験の様子
写真2:落葉広葉樹林での濁水ろ過実験の様子
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