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幹材中の放射性セシウムの分布は樹種や幹の位置・太さ・含水率で異なる

2020年7月6日掲載

論文名

Tracing radioactive cesium in stem wood of three Japanese conifer species 3 years after the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident.(福島第一原子力発電所事故より3年後の日本の針葉樹3樹種を対象とした幹材中の放射性セシウムの追跡)

著者(所属)

大橋 伸太・黒田 克史・藤原 健(木材加工・特性研究領域)、高野 勉(震災復興・放射性物質研究拠点)

掲載誌

Journal of Wood Science、66、44、June 2020、 DOI:10.1186/s10086-020-01891-2(外部サイトへリンク)

内容紹介

東京電力福島第一原発事故によって環境中に放出された放射性セシウムは、樹木の葉や根から吸収されて幹の木材の部分(幹材)にも移行しています。幹材中の放射性セシウムの分布は、均一でないことがわかっていますが、それが樹種や幹の太さなどによってどのように異なり、原発事故後の時間経過でどのように変化するのかはわかっていません。

本研究では、原発事故の3年後に伐採したスギ・ヒノキ・カラマツ(樹齢約50年、胸高直径約20〜50cm)の幹材中の放射性セシウム濃度の分布を調べました。その結果、放射性セシウムは、辺材(幹材の外側の部分)では概ね均一に分布している一方で、心材(幹材の内側の部分)では不均一に分布していました。そしてその分布パターンは、樹種や幹の位置・太さ・含水率によって異なることがわかりました(概要は下図をご覧ください)。このような違いは、幹材中の生きた細胞のセシウム輸送特性の違いや原発事故後の放射性セシウムの汚染経路の違いなどによって生じたと推察されます。上記に加え、天然に存在する安定セシウムの分布パターンと比較したところ、放射性セシウムは安定セシウムほど幹の中心付近まで分布しておらず、放射性セシウムの心材への移行がこの後も進行する可能性があることがわかりました。

今後も継続した調査を行い、幹材中の放射性セシウムの移行速度や平衡状態(分布がそれ以上変わらないかどうか)を明らかにし、幹材の放射性セシウム汚染の将来予測に貢献します。
 

(本研究は2020年6月にJournal of Wood Scienceで公表されました。)

 

図:原発事故より3年後の幹材中の放射性セシウム濃度の分布

図:原発事故より3年後の幹材中の放射性セシウム濃度の分布

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【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 木材加工・特性研究領域 大橋 伸太
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