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防潮堤に植栽した樹木の樹高は樹種や海側と陸側の法面で大きく異なった

2020年8月28日掲載

論文名

静岡県浜松市の防潮堤上における植栽木の生育と風況影響

著者(所属)

萩野 裕章(東北支所)、猿田 けい(前 静岡県農林技術研究所森林林業研究センター、現 静岡県経済産業部)

掲載誌

日本海岸林学会誌、19巻1号、日本海岸林学会、2020年6月30日

内容紹介

南海トラフ巨大地震に伴う津波にそなえて、静岡県では遠州灘沿岸に防潮堤を築いてその法面に樹木を植栽しています。これまでに、潮風の影響を強く受ける場所で、しかも巨大な防潮堤に盛土を施して樹木を植栽する例はなく、様々な課題を克服する必要があります。樹種の選定も重要な課題であり、本研究ではこうした条件下でも生育可能な樹種を知るために、浜松市に造成された防潮堤で植栽木の成長に風が及ぼす影響を調査しました(図1)。

今回の研究では、植栽樹種はクロマツの他にマツ材線虫病で枯れない広葉樹としてシャリンバイ、トベラ、マサキの4種を選択しました。これらの樹種が植栽された防潮堤の海側・陸側の法面で樹高成長を観察するとともに、法面上の風向・風速を観測しました。その結果、平均風速は海側法面で1.5m/s、陸側法面は0.9m/sで、海側法面の風速が高い傾向にありました。植栽木の4年間の樹高成長量は、クロマツが両方の法面で良好でしたが、広葉樹3樹種は良くありませんでした(図2)。2018年5月まで、シャリンバイとトベラは両法面ともほとんど成長がなく風況の差による成長量の違いは見られませんでしたが、マサキは他の広葉樹に比べて陸側法面での成長量がやや大きい傾向が見られ、潮風が穏やかな環境が成長量に影響したと推測できます。また、2018年9月の記録的な台風24号通過後の調査では、両方の法面で広葉樹は3樹種とも樹高が低下し、とくに海側法面で顕著でした。台風通過時の海側法面の最大風速(25.2m/s)は、陸側法面(10.8m/s)の2倍を超えており、こうした風速の違いが植栽木の潮風害(枯損)として現れたと思われます。これらの結果から、防潮堤上の広葉樹の植栽木においては、海側法面の防風柵を密に設置したり、前面のクロマツの成長を促してその防風効果を利用するなどの対策が考えられます(写真)。

 

 (本研究は2020年6月に日本海岸林学会誌で公表されました。)

 

図1 調査地の断面図

 

図1 調査地の断面図
風向風速の観測期間は2017年11月6日~2018年9月30日

 

 

図2 植栽木の樹高成長

図2 植栽木の樹高成長(縦棒は標準偏差)

 

写真 海側法面の広葉樹とクロマツ

写真 海側法面の広葉樹とクロマツ
斜面上部は広葉樹、中央から下部にクロマツ

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