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マツ枯れ被害先端地のカラフトヒゲナガカミキリから2種の線虫を検出

2020年10月05日掲載

論文名

Occurrence of two species of Bursaphelenchus (Nematoda: Aphelenchoididae) in the reproductive organs of Monochamus saltuarius (Coleoptera: Cerambycidae) (カラフトヒゲナガカミキリ生殖器官におけるBursaphelenchus属線虫2種の生息)

著者(所属)

小澤 壮太(東北支所)、前原 紀敏(森林昆虫研究領域)、相川 拓也(東北支所)、柳澤 賢一(長野県林業総合センター)、中村 克典(東北支所)

掲載誌

Nematology、BRILL、2020年9月 DOI:10.1163/15685411-bja10054(外部サイトへリンク)

内容紹介

マツノザイセンチュウはマツ材線虫病(以下、マツ枯れ)の病原体で、日本ではマツノマダラカミキリによって健全なマツに運ばれて被害をもたらします。マツノザイセンチュウは北米原産ですが、世界中に分布を拡大させていく中で、どのようにして土着のカミキリムシを新たな運び屋として利用するようになったのかは謎でした。

日本土着のカラフトヒゲナガカミキリは、通常マツ枯れを引き起こさない在来のニセマツノザイセンチュウの運び屋となっています。しかし今回、長野県のマツ枯れ先端被害地で捕獲したカラフトヒゲナガカミキリが運んでいる線虫を調べたところ、ニセマツノザイセンチュウに混じってその一部にマツノザイセンチュウが含まれていることを発見しました。これは、マツノザイセンチュウをもったマツノマダラカミキリが新たに侵入したこの地域で枯れたマツに産卵して線虫を媒介することで、従来からこの地域で枯れたマツを利用していたカラフトヒゲナガカミキリが新たにマツノザイセンチュウの運び屋になりかけていることを意味しています。さらに、これらの線虫がカラフトヒゲナガカミキリの雌雄成虫の生殖器官に常態的に侵入していることも発見しました。生殖器官に侵入した線虫では、運び屋となったカラフトヒゲナガカミキリの産卵行動に伴ってマツ樹体に侵入できるチャンスが高まると考えられます。以上の発見は、マツ枯れの未侵入地への拡大過程を理解する上で重要な知見となります。

 

(本研究は2020年9月にNematologyでオンライン公表されました。)

 

写真1:カラフトヒゲナガカミキリから線虫が遊離した様子

写真1:カラフトヒゲナガカミキリ雌成虫の生殖器官(受精嚢)から線虫が遊離した様子。
線状に広がっているものがBursaphelenchus属線虫。

 

写真2:カラフトヒゲナガカミキリとマツノマダラカミキリの雄成虫
写真2:カラフトヒゲナガカミキリ(左)とマツノマダラカミキリ(右)の雄成虫。
カラフトヒゲナガカミキリはマツノマダラカミキリに比べて小型のカミキリムシである。

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