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海と陸を分断すると海浜の生物多様性が低下する

2020年10月30日掲載

論文名

Coastal habitats across sea-to-inland gradient sustain endangered coastal plants and Hymenoptera in coastal dune ecosystems of Japan (海-内陸をつなぐ海浜ハビタットが絶滅のおそれのある海浜性植物およびハチ類の種多様性を維持している)

著者(所属)

小山 明日香(生物多様性研究拠点)、井手 竜也(国立科学博物館)

掲載誌

Biodiversity and Conservation、2020年10月15日 DOI:10.1007/s10531-020-02065-8(外部サイトへリンク)

内容紹介

海域と陸域の境界に位置する海浜生態系は、森-川-海の相互作用で形成され、生物多様性が高く、重要な生態系機能を担っています。しかし、海浜は人間利用と防災のためにその大部分が改変されており、特異な生物相を有するにも関わらず保全対策が進められてきませんでした。なかでも、海浜性の矮性低木(ハマゴウ)が優占する後砂丘は、近年の津波対策のための堤防設置などにより急速に消失しています(図1)。

そこで、後砂丘の消失が海浜域の植物種多様性および生態系機能に与える影響を検証するため、茨城県内の後砂丘の残る海浜と後砂丘が消失した海浜それぞれ3地点を対象に植物および生態系機能を担うハチ類(花粉媒介性および捕食性)の調査を行いました。調査地点では、絶滅危惧種を含む海浜性の在来植物、ハチ類に加え、非海浜性の外来植物が多く確認されました(図2、3)。解析の結果、非海浜性の外来植物の種数は後砂丘の有無の影響を受けませんでしたが、海浜性の在来植物の種数は後砂丘の残る海浜で高い傾向がありました。また、ハチ類の種数は花粉媒介性・捕食性ともに在来植物の種数の増加にともなって増えることが分かりました。

この結果は、堤防設置などによる後砂丘の消失が、海浜生態系の植物種多様性の低下とそれに伴う生態系機能の低下を招いていることを示しています。

ハチ類がもたらす生態系機能として、花粉媒介性のものは植物の受粉を促進し、捕食性のものは害虫の天敵となることが知られています。

 

(本研究は2020年10月15日にBiodiversity and Conservationでオンライン公開されました。)

 

図1:海浜における植物群集の移り変わりと後砂丘消失の概念図

図1:海浜(打ち上げ帯~後砂丘)における植物群集の移り変わり(上図)と後砂丘消失の概念図(下図)

 

図2:記録された植物種の例

図2:記録された植物種の例
海浜性の在来植物33種を含む109種が確認されました。

 

図3:採集されたハチ目昆虫標本の例

図3:採集されたハチ目昆虫標本の例
11科58種が確認されました。

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【研究担当者】
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【広報担当者】
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