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樹木の葉面積が決める乾燥落葉林の下層植生の水消費量

2020年11月13日掲載

論文名

Evapotranspiration from the understory of a tropical dry deciduous forest in Cambodia(カンボジア国の熱帯域乾燥落葉林における下層植生の蒸発散量)

著者(所属)

飯田 真一・清水 貴範・玉井 幸治(森林防災研究領域)、壁谷 直記・清水 晃(九州支所)、伊藤 江利子(北海道支所)、大貫 靖浩(東北支所)、Sophal Chann(Institute of Forest and Wildlife Research and Development, Cambodia)、Delphis F. Levia(University of Delaware, USA)

掲載誌

Agricultural and Forest Meteorology、295、108170、December 2020 DOI:10.1016/j.agrformet.2020.108170(外部サイトへリンク)

内容紹介

熱帯林の4割以上を占める乾燥林は、森林開発の影響を受けやすい植生の一つです。カンボジアには天然の乾燥林が広く残存していますが、近年開発が急速に進んでいます。同国では、内戦等の影響で森林に関する科学的情報が少なく、保全策を検討する上での足かせとなっていました。例えば、乾燥林の上層の落葉樹は疎らである一方、地面は下層植生で密に覆われていますが(写真)、下層植生の水の消費量(蒸散量)は不明のままでした。

そこで、カンボジアの乾燥林が消費する水の総量と、下層植生が消費する水の量を個別に計測しました。その結果、下層植生による水消費量の割合は上層の樹木の葉面積指数(註)が大きい月ほど小さく(図1)、年単位では森林全体の35%でした。また、世界の様々な森林でも、概ね葉面積指数に応じて変化しますが(図2)、気候や植物の種類、量の違いによって差があることが分かりました。

森林の間伐によって地面の光環境が改善し、下層植生の生育が促進されることが知られています。日本でも間伐による森林の水源涵養機能への影響について、上層木の効果に関心が集まっていましたが、今回明らかとなった下層植生の重要性は国内の森林施業を検討する上でも大変参考になります。

(註)葉面積指数:葉面積の合計を植物が占める地面の面積で除した値。

 

(本研究は2020年11月にAgricultural and Forest Meteorologyでオンライン公開されました。)

 

写真:カンボジア国の乾燥落葉林

写真:カンボジア国の乾燥落葉林。
上層の樹木は疎らで、矮性のタケ(Vietnamosasa pusilla)を主とする下層植生が地面を覆う。

 

図1:カンボジア乾燥落葉林の水消費量に占める下層植生の割合と上層の樹木の葉面積指数の関係

図1:カンボジア乾燥落葉林の水消費量(蒸発散量)に占める下層植生の割合と上層の樹木の葉面積指数の関係。
葉面積指数が小さい月には、下層植生の水消費の割合が大きくなる。データはIida et al. (2020)から引用。

 

図2:世界各地の森林の水消費量に占める下層植生の割合と上層の樹木の葉面積指数の関係

図2:世界各地の森林の水消費量(蒸発散量)に占める下層植生の割合と上層の樹木の葉面積指数の関係。
樹木の葉面積指数が小さくなると、下層植生の水消費量の割合が大きくなるが、森林による違いも大きい。データはIida et al. (2020)から引用。

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