研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 香りも味も世界初「木のお酒」
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2020年12月1日掲載
論文名 |
Production of flavorful alcohols from woods and possible applications for wood brews and liquors.(木材から香り高いアルコールの製造と木の醸造酒、蒸留酒への応用可能性) |
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著者(所属) |
大塚 祐一郎・野尻 昌信・楠本 倫久(森林資源化学研究領域)、Ronald R. Navarro(元森林総研PD)、橋田 光・松井 直之(森林資源化学研究領域) |
掲載誌 |
RSC Advances, 10, 39753-39762, November 2020 DOI:10.1039/d0ra06807a(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
世の中では、様々なお酒が飲まれていますが、その原料は穀物のデンプンや果実およびサトウキビの糖分に限られてきました。 我々は今回、水と食品用の酵素、醸造用の酵母のみを用いて、熱処理や薬剤処理なしに木材中の繊維を糖化・発酵する技術を開発し、世界で初めての「木のお酒」を目指したアルコールの製造方法を確立しました。さらにスギ、白樺、桜の材から試験製造したアルコールについて、その香り成分の分析を行いました。その結果、スギ材から製造したアルコールにはスギ材特有の香り成分が多く含まれ、より木らしい香りを持つことが明らかとなりました。また、桜の材から製造したアルコールには、ジャスミンなどの花の香り成分が含まれ、より華やかな香りを持つことを明らかにしました。一方、白樺材からのアルコールには、木特有の香り成分は少なく、代わりに甘い熟成香を示す成分が多く含まれることにより、フルーティーで甘い香りを持つことがわかりました。これらの結果は、樹種ごとに異なる香りのアルコールが製造できることを示しています。さらに今回、多変量解析により市販のワイン、日本酒、ブランデーやウイスキーなどと香りや味覚を比較したところ、木から製造したアルコールは市販のお酒とは香りも味覚も異なる特徴を持つことも示されました。この木を原料としたアルコールは、直径30cm、長さ4mのスギ材を原料とした場合、アルコール度数35%の「木の蒸留酒」を750mL詰めでおよそ50本作ることができる計算となりました。 本研究成果は、林業の成長産業化に向けた新しい木材の利用技術となるだけでなく、新しい食文化の創生にもつながると期待しています。
(本研究は2020年11月にRSC Advancesで公開されました。)
図1:木のお酒の製造プロセス。 図2:木から製造したアルコールと市販されている酒との香り・味覚成分比較。 |
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