研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 海岸林の盛土の硬さは植栽木の根系発達に影響する
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2020年12月21日掲載
論文名 |
Soil hardness regulates the root penetration by trees planted on anthropogenic growing bases in coastal forests in Japan: new endeavors to reforest the coastal disaster prevention forests with high resilience for tsunami.(海岸林の人工生育基盤の土壌硬度が植栽木の根系伸長に及ぼす影響:高い津波減災能を持った海岸防災林を再生するための新たな挑戦) |
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著者(所属) |
小野 賢二(東北支所)、野口 宏典(森林防災研究領域)、野口 享太郞(東北支所)、今矢 明宏(国際農林水産業研究センター)、宇川 裕一(千葉県森林研究所)、小森谷 あかね(千葉県中部林業事務所)、橘 隆一(東京農業大学)、村上 尚徳(岩手県林業技術センター)、木田 仁廣(森林総合研究所PD)、川東 正幸(東京都立大学) |
掲載誌 |
Journal of Soils and Sediment DOI:10.1007/s11368-020-02788-9(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
東日本大震災の大津波では太平洋沿岸の海岸林約3600haが被災し、根張りが浅かった樹木の多くが根返りして流されました。そのため、震災復興事業では根が深く張れるように盛土して地盤をかさ上げし、津波に耐えられる海岸林の再生を目指すこととなりました。しかし、一般にこのように人工的に造られた生育基盤では土は固く、透水性も悪くなりやすく、植栽木の生育に影響が及ぶと懸念されてきました。そこで、筆者らは関東から東北地方の海岸林や海浜公園で調査を行い、人工生育基盤の土壌改良が樹木の生育に与える影響を調べました。 耕起等の土壌改良を施した生育基盤は、透水性が高く軟らかな土で構成され、樹木の生育や根の伸長も良好でした。造成後40年経った基盤では、土壌構造や層位の発達が見られ、土壌の生成が進んでいました。一方、土壌改良が行われなかった人工基盤では、重機の踏圧でできた厚い固結層が連続して分布していました。また固結層の上にはグライ化*1した土層が見られたことから、固結層は土層内に水を停滞させ、酸素が不足する環境であったことが分かりました。こうした生育基盤では、樹木の生育や根の伸長が阻害され、植え穴から根が伸びていない植栽木もあることが確認されました。 以上の結果から、海岸林の生育基盤造成においては、できるだけ土を締め固めないような工法を採用することが、根が支障なく伸びられる土壌環境を造るうえで重要であると考えられます。 *1 グライ化とは、土壌中に水が長期にわたって停滞するところや、地下水面が恒常的に高いところで起こる、土壌生成作用のことを言います。グライ化が起こる土壌では、土が水で満たされるため、酸素不足となります。そうした酸欠環境下では土に含まれる酸化鉄(Fe3+)が還元され、還元鉄(Fe2+)が生成されるため、土の色が青灰色から緑灰色を呈することが知られています。
(本研究は2020年10月に Journal of Soils and Sediment で公表されました。)
写真:土を締め固めないよう配慮した工法による海岸林生育基盤の造成作業風景(左写真:岩手県陸前高田市、撮影:(株)佐武建設)とその造成後に植栽された樹木の根(右写真)の様子
写真:グライ化*1した土層が見られる、震災復興事業初期の生育基盤の様子(左写真)と根が伸びられずそのまま植え穴の中に留まっている植栽木の根の様子(中・右写真) |
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