研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > 安比高原ブナ林土壌の保水力の正体
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2021年2月8日掲載
論文名 |
ブナ林土壌の保水機能の二面的定量評価 ―岩手県安比高原を対象として― |
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著者(所属) |
大貫 靖浩・小野 賢二(東北支所)、安田 幸生(企画部)、釣田 竜也(立地環境研究領域)、森下 智陽(東北支所)、山下 尚之(立地環境研究領域) |
掲載誌 |
森林立地、62巻2号、91-100、森林立地学会、2020年12月 |
内容紹介 |
ブナ林の土壌は、従来から森林の中でも保水機能が高い土壌の代表と言われてきました。しかし、水持ちが良く貯めた水を少しずつ流す機能が高いのか、あるいは、容量が大きく水をたくさん貯めることが出来るのか、その保水機能の正体についてはよくわかっていませんでした。 著者らは、岩手県北部の安比高原に位置する安比森林気象試験地内の樹齢80~90年のブナ林において、「水持ち」の指標と考えられる土壌含水率と、「容量」をおもに規定する土壌層厚をそれぞれ多点で測定し、保水機能の両側面をはじめて同時に数値化しました。その結果、「水持ち」の機能としては、ある程度の期間雨が降らなくても、土壌の一定体積中の水分量を示す含水率は40~70%と、スギ林での実測値(30~50%)と比べて高い値を示し、まとまった降雨から1週間以上経っても湿潤であることがわかりました(図)。一方「容量」の面では、土壌層厚が平均1m未満とあまり厚くはなく、平常時の土壌水分が多いため、1時間に100mm以上の雨が降ると地表流が発生する可能性があることがわかりました。 本研究により、“ブナ林の土壌は保水機能が高い”という通説について、安比高原においては“水持ちが良い”という裏付けが取れました。ただし、土壌があまり厚くないため“容量”については、それほど高くないかもしれません。北東北には、安比高原以外にもブナ林があちこちに分布していますので、こうした特徴が北東北のブナ林に広くあてはまるのかについては、今後さらに研究を進める必要があります。
(本研究は2020年12月に学会誌「森林立地」で公表されました。)
写真1:土壌水分を計測した安比試験地のブナ林
写真2:測定に使用した土壌水分計 |
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