研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > シイタケへのセシウムの吸収しやすさを正確に測定するには

ここから本文です。

シイタケへのセシウムの吸収しやすさを正確に測定するには

2021年3月29日掲載

論文名

Factors affecting the cesium transfer factor to shiitake (Lentinula edodes) cultivated in sawdust medium.(菌床栽培シイタケ(Lentinula edodes)におけるセシウムの移行係数に影響を与える因子)

著者(所属)

平出 政和(きのこ・森林微生物研究領域)

掲載誌

Journal of Wood Science, February 2021 DOI:10.1186/s10086-021-01949-9(外部サイトへリンク)

内容紹介

東日本大震災により被災した東京電力福島第一原子力発電所から環境中に放出された放射性セシウムにより原木栽培シイタケは現在でも影響を受けています。その影響低減に向けて様々な研究開発を行ってきました。しかし、ほだ木からきのこ(シイタケ)へセシウムが移行する割合、つまり移行係数は、化学的性質がほぼ同等の放射性セシウムと安定セシウムとの間で一致していませんでした。この不一致のため、低減策の有効性の評価が難しくなっています。

移行係数は、ほだ木や菌床に含まれている全セシウム濃度を用いて算出しています。しかし、これらのセシウムは、きのこに移行しやすい形態注)のものと移行しにくい形態のものとに分けられることがわかりました。そこで、移行しやすい形態のセシウム濃度に基づいて、放射性セシウムと安定セシウムによる移行係数を比較したところ、両者は一致しました。この結果から、移行しやすい形態のセシウムの濃度を用いることにより、より正確な移行係数を算出することが可能になりました。

本研究によって改良された移行係数の算出方法を用いることにより、原木栽培シイタケへ及ぼす放射能セシウムの影響の低減に向けた研究開発が進展すると考えられます。

注)交換態のセシウム。1規定の酢酸アンモニウム水溶液により抽出される。

 

(本研究は2021年2月にJournal of Wood Scienceで公表されました。)

 

図:従来方法と改良方法の比較

 ※:移行係数は乾燥重量を基準にして表示しています。

図:全セシウム量により算出する方法(従来方法)と、きのこ(シイタケ)に移行しやすい形態のセシウム量により算出する方法(改良方法)の比較。従来方法では放射性セシウムと安定セシウムから算出される移行係数は異なりましたが、改良方法では、その違いがなくなり、より正確な移行係数を算出できることがわかりました。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 山中 高史
【研究担当者】
森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 平出 政和
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
【取材等のお問い合わせ】
相談窓口(Q&A)E-mail:QandA@ffpri.affrc.go.jp
電話番号:029-829-8377(受付時間:平日9時30分~12時、13時~16時30分)

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8377

FAX番号:029-873-0844