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森林から反射した光で二酸化炭素吸収速度を正確に測定する手法を開発した

2021年3月29日掲載

論文名

Integration of electron flow partitioning improves estimation of photosynthetic rate under various environmental conditions based on chlorophyll fluorescence. (電子伝達の分配を組込むことで様々な環境条件下でのクロロフィル蛍光に基づく光合成速度推定が改善される)

著者(所属)

北尾 光俊(北海道支所)、安田 幸生(企画部)、小谷 英司(東北支所)、原山 尚徳(植物生態研究領域)、粟屋 善雄(岐阜大)、小松 雅史(きのこ・森林微生物研究領域)、矢崎 健一・飛田 博順(植物生態研究領域)、AGATHOKLEOUS Evgenios(南京信息工程大学)

掲載誌

Remote Sensing of Environment, Volume 254, 112273, March 2021 DOI:10.1016/j.rse.2020.112273(外部サイトへリンク)

内容紹介

近年、無人航空機(ドローン)の普及にともない、森林から反射する光(分光反射スペクトル)が容易に測定できるようになってきました。従来の分光反射スペクトルによる指標は、主として植物の葉量を推定するものでしたが、最近では、植物の光合成活性を推定する新たな指標が開発されています。

本研究では、新たな指標の一つであるPRI(光化学的反射指標)を用いた森林の二酸化炭素吸収速度の推定手法の開発を行いました。森林の二酸化炭素吸収速度は、森林総合研究所が長期にわたり測定を行っている安比試験地ブナ林に設置されたフラックスタワーのデータを用いました(森林総合研究所フラックス観測ネットワーク:https://www2.ffpri.go.jp/labs/flux/aboutus_j.html(外部サイトへリンク))(写真1)。ブナ林の分光反射スペクトルを安比フラックスタワーから測定することでPRIを計算し、森林の二酸化炭素吸収速度との関係を調べました。その結果、PRIだけでなく、森林の気孔開度(二酸化炭素の取り入れやすさ)と葉の温度を考慮することで、高い精度で森林の二酸化炭素吸収速度が推定できることがわかりました(図1)。

この結果は、乾燥ストレスにより気孔が閉じてしまうような条件での二酸化炭素吸収速度の正確な推定を可能にし、衛星データによる広域での森林の二酸化炭素吸収量の推定に貢献します。

 

(本研究は2021年3月にRemote Sensing of Environmentでオンライン公表されました。)

 

写真:安比フラックスタワーから見下ろしたブナ林

写真1:安比フラックスタワーから見下ろしたブナ林(樹高約20メートル)。

 

 

図:森林の二酸化炭素吸収速度の実測値と推定値との関係

図1:森林の二酸化炭素吸収速度の実測値と推定値との関係。

破線上では「推定値」=「実測値」となる。記載論文の図を一部改変して使用した。

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森林総合研究所 研究ディレクター 平田 泰雅
【研究担当者】
森林総合研究所 北海道支所 北尾 光俊
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