研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > やんばるの希少着生ランは共生菌の選り好みが激しい
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2021年5月21日掲載
論文名 |
The endangered epiphytic orchid Dendrobium okinawense has a highly specific mycorrhizal association with a single Tulasnellaceae fungus(絶滅のおそれのあるラン科着生植物オキナワセッコクはツラスネラ科の1菌種と特異的に菌根共生している) |
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著者(所属) |
蘭光 健人(佐賀大学、鹿児島大学大学院)、阿部 真(森林植生研究領域)、安部 哲人・小高 信彦(九州支所)、久高 将洋・久高 奈津子(やんばるグリーン)、木下 晃彦(九州支所)、辻田 有紀(佐賀大学) |
掲載誌 |
Journal of Forest Research、Taylor & Francis・日本森林学会英文誌、2021年1月 DOI:10.1080/13416979.2021.1876587(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
沖縄島北部のやんばるは高い生物多様性を擁し、多くの種類の希少な動植物が生息しています。2016年に国立公園に指定され、さらに奄美大島・徳之島・西表島と共にユネスコ世界自然遺産の候補地となりましたが、認定を実現するには科学に基づいた希少な動植物の保全策が求められます。 オキナワセッコクは木の上で生活する着生ランで、やんばるを代表する希少植物の一つです。主に第二次世界大戦後の伐採や園芸目的での採集により個体数が激減したとされ、国や県のレッドリストに掲載されると共に特定第一種国内希少野生動植物種注)に指定されています。ランの仲間の生育には根に共生する菌類(共生菌)が欠かせません。共生菌の種類や生態を知ることはランの保全を考える上で極めて重要ですが、オキナワセッコクの共生菌は不明でした。本研究では10個体のオキナワセッコクから共生菌を採取し、DNA情報から種を同定しました。その結果、全個体で担子菌類のツラスネラ科に属す1菌種が検出され、オキナワセッコクがこの共生菌を特に好んでいることがわかりました。一般に共生菌を選り好みするランほど分布域が狭くなると考えられています。以上のことから、オキナワセッコクの高い希少性には共生菌の選り好みが関与している可能性があります。またこれは、オキナワセッコクを保全するためには、豊かな共生菌類相を持つ多様な森林環境を維持する必要があることを示唆しています。
注) 環境省が定める、絶滅危惧種かつ人為的影響により存続が危ぶまれる生物種
(本研究は、Journal of Forest Researchにおいて2021年1月にオンライン公表されました。)
写真:樹幹に着生するオキナワセッコク
写真 (B)共生菌の感染組織:写真Aの赤枠内を拡大したものです。菌糸は植物の細胞内で菌糸コイルと呼ばれるコイル状の構造をつくります。 (矢印)菌糸コイルが形成されている細胞。 (矢頭)感染が見られない細胞。 |
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