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2021年6月21日掲載
論文名 |
Water and energy balance of canopy interception as evidence of splash droplet evaporation hypothesis(飛沫蒸発仮説のエビデンスとしての樹冠遮断の水・熱収支) |
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著者(所属) |
村上 茂樹(九州支所) |
掲載誌 |
Hydrological Sciences Journal、International Association of Hydrological Sciences、2021年5月 DOI:10.1080/02626667.2021.1924378(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
森林に降った雨水の一部は蒸発し、その残りが河川水や地下水になります。このため、水源涵養機能の解明には蒸発の研究が欠かせません。森林に雨が降ったとき、雨水の約2割が枝や葉から蒸発します。このような蒸発のことを樹冠遮断と呼びますが、不明な点が多いため、精密な測定が可能なプラスチック製のクリスマスツリーを使って実験を行いました。 トレイに多数のツリーを並べ、自然降雨による屋外実験を行いました(写真)。森林に降る雨は、樹木付着水、地面到達水、樹冠遮断の3つに分類されます。そこで、降った雨の量から、簡単に計測できる樹木付着水と地面到達水の量を差し引いて樹冠遮断の量を求めました。雨量84.9mmの降雨では樹冠遮断は17.3mm(雨量の20.4%)となり(注)、実際の森林の推定値と同程度でした。樹冠遮断(蒸発)の割合は降雨中が94.3%、降雨後が3.5%、降雨一時休止中が2.3%でした(図)。降雨中の蒸発のうち、ぬれた枝葉表面からの蒸発は樹冠遮断全体の12.7%(計算値)で、残りの81.6%は雨滴が枝葉にぶつかって生じる飛沫の蒸発と考えられます。霧吹きのミストが蒸発しやすいのと同様に、飛沫は湿度の高い降雨中でも容易に蒸発するのです。 樹冠遮断の仕組みを調べることは、どのような森林が水源涵養機能をより良く発揮できるのかを検討することに役立ちます。
(注)雨量は降ってきた雨水が流れ去らずに貯まったときの深さ(単位mm)で表し、蒸発も同様に蒸発する前の水の深さ(単位mm)で表します。
(本研究は、Hydrological Sciences Journalにおいて2021年5月にオンライン公表されました。) (受理原稿が著者の個人サイトからダウンロードできます。http://cse.ffpri.affrc.go.jp/smura/Papers/Murakami_2021_HSJ.pdf(外部サイトへリンク))
写真:プラスチック製のクリスマスツリーを使った実験
図:樹冠遮断の内訳 雨量84.9mmの降雨の際に17.3mmの樹冠遮断が測定されました。樹冠遮断のうち、降雨中の蒸発が94.3%を占め、その多くは飛沫蒸発でした。降雨後の蒸発と降雨一時休止中の蒸発は、それぞれ3.5%と2.3%でわずかでした。 |
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