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2021年7月28日掲載
論文名 |
高知県白髪山に成立する森林の樹種構成と温帯性針葉樹の定着マイクロサイト |
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著者(所属) |
前田 綾子(高知県立牧野植物園)、酒井 敦(東北支所)、杉田 久志(雪森研究所) |
掲載誌 |
森林立地、63(1):1-11 2021年 DOI:10.18922/jjfe.63.1_1(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
高知県本山町白髪山(標高1469m)の天然生ヒノキ林は、大正期に国内で初めて指定された保護林のひとつで、現在でも唯一その指定区域が変わらず残されています。ここでヒノキなどの温帯性針葉樹注1)がどのように更新して世代をつないでいるのか探るために調査を行いました。 天然林に9つの調査区を設置して樹種構成の稚樹と立地の関係を調べ、温帯性針葉樹が定着している場所を特定しました。その結果、ヒノキの稚樹はササが密生する地表や岩の上ではなく、面積としては限られた倒木や古い根株の上に定着していることがわかりました(写真1)。また、ツガやゴヨウマツもヒノキと同様の傾向がみられました。白髪山のヒノキは根がタコ足状になっているものが多いのですが(写真2)、これは根株の上に芽生えた稚樹が長い時間をかけて大きくなる間に元の根株が腐ってなくなったことを物語っています。 このように倒木の上で世代をつないでいる様子は、北海道や本州の亜高山帯の針葉樹ではよく知られていましたが、四国の温帯性のヒノキやツガ、ゴヨウマツも同様であることが今回初めて明らかになり、日本の針葉樹の天然生林が維持される仕組みを解く手がかりが得られました。 注1)温帯性針葉樹:比較的温暖な地域で生育する針葉樹。ヒノキ、スギ、コウヤマキ、ツガ、ゴヨウマツなどがある。
(本研究は、森林立地において2021年7月に公表されました。)
写真1:古い倒木の上に定着したヒノキの稚樹
写真2:根がタコ足状になったヒノキ |
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