研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > カンボジアの乾燥常緑林は上層と下層で二度葉を落とす
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2022年1月14日掲載
論文名 |
Bimodal leaf fall in a lowland dry evergreen forest in Cambodia(カンボジア低地乾燥常緑林における二峰性の落葉について) |
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著者(所属) |
伊藤 江利子(北海道支所)、Bora Tith・Samkol Keth・Sophal Chann(カンボジア森林局)、飯田 真一・清水 貴範(森林防災研究領域)、玉井 幸治(研究ディレクター)、荒木 誠(森林防災研究領域)、壁谷 直記・清水 晃(九州支所)、神崎 護(京都大) |
掲載誌 |
Cambodian Journal of Natural History, 2021 (1) 21–39: 2021.12.26 |
内容紹介 |
林冠における季節的な葉の動態は森林生態系の光合成生産や水循環に影響する重要な要素のひとつです。私たちは明瞭な雨季と乾季を有する季節性熱帯のカンボジア・コンポントム州の低地乾燥常緑林で2004年から落葉と展葉のフェノロジー(生物季節性)を10年間調査しました。その結果、樹高30~40mに達するフタバガキ科高木樹種(Dipterocarpus costatusとAnisoptera costata)では11月から始まる乾季の前半に落葉ピークがあり、それ以外の樹種が優占する中下層においては乾季の後半に落葉ピークがあることが明らかになりました。また、上層でも中下層でも落葉からほどなくして新葉が展開することも分かりました。常緑林はその名の通り一年中葉をつけており、季節変化は一見ないように見えます。しかし低地乾燥常緑林では、乾季前半には林冠上層部の葉が一斉に入れ替わり、中下層部では乾季後半に徐々に葉が入れ替わるダイナミックな葉群動態が起こっていたことが分かりました。大径木の択伐により樹種の構成が変化した低地乾燥常緑林では、落葉ピークは乾季後半のみとなり、林床に供給される落葉量も減少していると推定されます。森林劣化に付随する林分の葉フェノロジーや樹冠葉量の変化は生態系に大きな変化をもたらす可能性があり、今後の研究が必要です。
(本研究は2021年12月にCambodian Journal of Natural Historyにおいて公開されました。)
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