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スギ非赤枯性溝腐病菌の分布は温度特性で決まる

2022年1月19日掲載

論文名

Temperature characteristics of two Fomitiporia fungi determine their geographical distributions in Japan(Fomitiporia属菌2種の国内における地理的分布はそれらの温度特性によって規定される)

著者(所属)

鳥居 正人・升屋 勇人(きのこ・森林微生物研究領域)、服部 力(研究ディレクター)

掲載誌

Forests、12(11)、1580、2021年11月 DOI:10.3390/f12111580(外部サイトへリンク)

内容紹介

チャアナタケモドキは、スギに深刻な材質劣化を引き起こす非赤枯性溝腐病の病原菌です(写真)。また、コウヤマキや日本ナシなど様々な樹種に感染する病原菌としても知られています。しかし、近年まで本菌は近縁種と分類学的に混同されていたこともあり、国内における正確な分布域は特定されておりません。さらに、本菌の生育可能な分布域を推定することは、病害の発生を予測する上で重要です。

本研究では、本菌の採取情報を精査し、採取地点の気象データをもとに分布域を推定しました(図)。その結果、スギ非赤枯性溝腐病による未被害地にも本菌が分布する可能性が高いことがわかりました。さらに、本菌の温度特性を調べるとともに採取地点の気温と照合したところ、採取地点の最高・最低気温は本菌が生育可能な範囲に収まっていることを明らかにしました。

以上の結果から、本菌の分布域は、各地の気温と本菌の温度特性によって決定されると推定されました。したがって、気候変動によって今後生息可能な地域が変化する可能性もあります。スギ非赤枯性溝腐病による被害は、現時点では千葉県を中心とした限られた地域から報告されています。しかし、菌の生息が予想される地域では、今後新たに被害が発生しないか注視する必要があります。

(本研究は、2021年11月にForestsにおいて公開されました。)

 

写真:非赤枯性溝腐病によるスギ被害木
写真:非赤枯性溝腐病によるスギ被害木では幹の辺材が腐朽するとともに、幹が変形して縦溝が形成される。被害が進展した木では腐朽部、変形部が6mにも及ぶことから、その林業的価値は著しく低下する。

 

図:地図上のチャアナタケモドキの分布

図:右下のバーのように、地図上にチャアナタケモドキが分布する可能性が高い地域を赤、また低い地域を青で示した(掲載論文の図を一部改変して使用した)。

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【研究担当者】
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