研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > スズタケはアズマザサとミヤコザサを押しのけて、30年間拡大し続けた
更新日:2022年3月11日
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2022年3月11日掲載
論文名 |
茨城県北部小川試験地におけるササ類3種の30年間の動態 |
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著者(所属) |
新山 馨(森林植生研究領域)、柴田 銃江(森林植生研究領域)、齋藤 智之(東北支所)、直江 将司(東北支所) |
掲載誌 |
森林総合研究所研究報告、Vol.20-No.4( No.460)、 339-351、 2021年12月、森林総合研究所 |
内容紹介 |
森林に繁茂するササ類は樹木の世代交代を妨げることから、森林生態学や森林管理上の大きな課題となっています。そこで、ブナ林に生育するササ類の分布拡大速度と稈(草本の茎に相当)の寿命を、30年間の長期研究で明らかにしました。茨城県北部の小川ブナ希少個体群落保護林(103.51ha)に設定されている小川試験地(6ha)内の600個の調査枠 (1つ4m2)を使い、主な3種類のササ類の分布や稈の数などを調べた結果、分布面積は稈高が最も高いスズタケ(2m)で0.24haから0.66haに、稈高のより低いアズマザサ(1.5m)とミヤコザサ(0.8m)で、それぞれ2.68haから2.84ha、0.30haから0.44haに増えていました。稈寿命はスズタケ、アズマザサ、ミヤコザサの順に平均で15年、7年、2年と推定されました。稈高が高く稈寿命も長いスズタケは他種を排除して拡大を続けており、数百年をかけてスズタケが優占注1する森林へ移り変わることが予想されましたが、2017年にはスズタケの一部が開花・枯死する現象も起こりました。一方、アズマザサとミヤコザサはお互いを排除できずに共存していくと考えられました。全国的にシカによる食害やナラ枯れ注2が拡大する中、北関東に残された貴重なブナ林の保全を図るためには混生するササ類の生態も理解し、樹木の世代交代が順調に進むのか長期的に研究する必要があります。
注1優占:ある植物が大部分の面積を占めて生育すること 注2ナラ枯れ:キクイムシの仲間が媒介する菌害によりコナラやミズナラが衰弱したり、枯死したりする樹木の病気
図 300m x 200mの試験地内でのスズタケの1990年から2017年までの分布拡大の様子。赤い丸の大きさは調査枠の中の稈の数に比例している。なお2017年の調査の直後に一部が開花・枯死した。
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