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老齢になっても成長を続けている天然林がある

2022年3月30日掲載

論文名

Aboveground biomass increments over 26 years (1993–2019) in an old-growth cool-temperate forest in northern Japan(北日本の冷温帯の老齢林における26年間(1993年–2019年)の地上部バイオマスの増加)

著者(所属)

野口 麻穂子(東北支所)、星崎 和彦(秋田県立大学)、松下 通也(林木育種センター)、杉浦 大樹(秋田県立大学)、八木橋 勉(森林植生研究領域)、齋藤 智之(東北支所)、板橋 朋洋・太田 和秀(秋田県立大学)、柴田 銃江・星野 大介(森林植生研究領域)、正木 隆(研究ディレクター)、大住 克博(元鳥取大学)、高橋 和規(関西支所)、鈴木 和次郎(元森林総合研究所)

掲載誌

Journal of Plant Research、Springer Nature、日本植物学会 2022年1月(オンライン掲載日) DOI:10.1007/s10265-021-01358-5(外部サイトへリンク)

内容紹介

老齢段階(注1)に達した天然林、いわゆる老齢林は多くの生物の生息地として重要であるとともに、樹木や土壌に多量の炭素が蓄えられており、炭素の「貯蔵庫」としての役割を担っています。一方で、老齢林ではバイオマス(注2)の増加は停滞し、二酸化炭素の「吸収」には役立っていないと、長年考えられてきました。しかし、そうとは限らない事例も最近報告されています。

そこで私たちも、ブナ、カツラ、ミズナラなどが生育する岩手県内の老齢林で1993年から続けている長期観測のデータに基づいて、地上部バイオマスの変化を調べました(写真)。その結果、この森林では、地形条件にかかわらず2019年までの26年間にわたって、ほぼ継続的にバイオマスが増加していたことがわかりました(図)。また、サイズの大きな樹木がバイオマスの増加に特に貢献していること、期間中に枯れた樹木があると近隣の樹木が旺盛に成長して埋め合わせをしていることもわかりました。

本研究の成果は、炭素の貯蔵庫であるだけでなく吸収する役割も果たしている老齢林が日本にもあることを示したものです。

(注1)森林が年齢を重ね、さまざまな太さや高さ、林冠の広がりを持つ樹木が混在する、複雑な構造を持つようになった状態。

(注2)バイオマス:面積あたりの生物の量。ここでは、樹木の直径データに基づいて、1ヘクタールあたりの樹木の地上部(幹・枝・葉の合計)の乾燥重量を推定しています。そのおよそ半分が炭素の量になります。

(本研究は、2022年1月にJournal of Plant Researchにおいてオンライン公開されました。)

 

写真:調査対象とした老齢天然林
写真:調査対象とした老齢天然林(渓畔域)

 

図:26年間の地上部バイオマスの変化
図:26年間の地上部バイオマスの変化
(記載論文の図を一部改変して使用しました)

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【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 正木 隆
【研究担当者】
森林総合研究所 東北支所 野口 麻穂子
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