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熱帯常緑林は雨季に降った雨水を分厚い土壌に蓄えて、乾季でも湿潤である

2022年4月6日掲載

論文名

Fluctuation of soil water content in tropical seasonal forests of Cambodia focusing on soil types and properties.(カンボジアの熱帯季節林における土壌水分変動―土壌型・土壌特性に着目して―)

著者(所属)

大貫 靖浩(東北支所)、鳥山 淳平(九州支所)、伊藤 江利子(北海道支所)、飯田 真一(森林防災研究領域)、壁谷 直記(九州支所)、チャン・ソファール(カンボジア森林野生生物開発研究所)、ケス・サムコル(カンボジア森林野生生物開発研究所)

掲載誌

JARQ-Japan Agricultural Research Quarterly、56(2)、JIRCAS 2022年4月 URL:https://www.jircas.go.jp/ja/publication/jarq/2020s26(外部サイトへリンク)

内容紹介

カンボジア中央部のメコン川西岸は、乾季にはほとんど雨が降らない熱帯モンスーン気候下にあるにもかかわらず、1年を通じて葉の茂っている熱帯常緑林が広く分布しています。この原因は、非常に厚い土壌層が雨季に蓄えた水分を乾季に利用するためです。本研究ではさらに、その分厚い土壌に蓄えられた水が、乾季でも林床を湿潤な環境に保っていることを明らかにしました。

カンボジア国内のほぼ同じ緯度、標高に分布する熱帯常緑林と熱帯落葉林に、各4haの試験地を設置し、4年にわたり多点での表層土壌含水率を測定しました。その結果、表層土壌含水率は植生・土壌型・土壌の厚さ・地形に影響を受け、最も影響が大きかったのは土壌の厚さの違いでした。写真1と2に示しますように、乾季の落葉林では下草も枯れカラカラに乾いていますが、常緑林では湿地が点在し、林床を湿潤な環境に保たれていました。

一方で通常なら乾季でも林床が湿潤な環境である熱帯常緑林であっても、エルニーニョ現象が発生して極端な少雨となった年には林床が極端に乾燥することが観測されました(図)。気候変動により降水量が激減した場合、土壌層の貯留水分が減少して常緑林の生育に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、今後も継続的な調査が必要です。

注)表層土壌含水率(一定体積の表層土壌中に水が占める割合。百分率で表示)

(本研究は、2022年4月にJARQ-Japan Agricultural Research Quarterlyにおいてオンライン公開されました。)

 

写真1 カラカラに乾いた乾季の熱帯落葉林
写真1 カラカラに乾いた乾季の熱帯落葉林

 

写真2 乾季での熱帯常緑林の湿地と気根
写真2 乾季での熱帯常緑林の湿地と気根
乾季でも熱帯常緑林は、湿潤な環境である。

 

図 表層土壌含水率と土壌の厚さの違い
図 表層土壌含水率と土壌の厚さの違い

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 玉井 幸治
【研究担当者】
森林総合研究所 東北支所 大貫 靖浩

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