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セルロースナノファイバー配合下塗り塗料で塗装した木材の変色抑制メカニズムが明らかに

掲載日:2022年5月18日

木製品を外構や内装、生活用品へ使用する機会が増えており、美観を維持するための塗料が大きな役割を果たします。スギチップから調製したセルロースナノファイバー(CNF)*を使用して、木製品の変色を抑える水性の下塗り用塗料を玄々化学工業(株)と共同開発しました。このCNF配合下塗り塗料による塗装木製品の変色抑制メカニズムを明らかにするため、アクリル樹脂との複合フィルムを作成してCNFの添加効果を検討しました。
CNFを配合することでフィルムの強度が上昇し、紫外線領域の光透過率が減少するとともに、酸素透過率が大きく抑制されました。塗膜の中にCNFによって構成された緻密な構造が、酸素ガス等の透過を妨げたと考えられます。CNF配合樹脂によって木材を塗装してから紫外線に暴露し、その直後に木材の変色等の原因になるラジカルの発生量を測定した結果、CNF配合樹脂で塗装された木材からはラジカル発生量の減少が確認されました。CNF配合により紫外線や酸素が遮蔽されることで、変色の一因となるラジカルの発生が抑制され、膜の強度が上昇したことと相まって塗装木製品の変色が抑制され、塗膜の耐候性向上につながったと考えられます。開発されたCNF配合下塗り塗料を用いることで、木がもともと持っている色合いや木目を活かした木製品の美観を長期間保ち、メンテナンスの軽減と木製品の寿命延長に効果が期待できます。
*:酵素・湿式解砕法による。

(本研究は、2021年12月にJournal of Wood Scienceにおいて公表されました。)

図:CNF配合下塗り塗料で塗装した木製品の変色抑制メカニズム
図:CNF配合下塗り塗料で塗装した木製品の変色抑制メカニズム(上塗り塗料としてクリア塗料を用いた場合)

  • 論文名
    The effects of cellulose nanofibers compounded in water-based undercoat paint on the discoloration and deterioration of painted wood products.(水性下塗り用塗料に配合されたセルロースナノファイバーが塗装木製品の変色と劣化に及ぼす影響)
  • 著者名(所属)
    下川 知子・菱川 裕香子・戸川 英二・澁谷 源(森林資源化学研究領域)、小林 正彦・石川 敦子(木材改質研究領域)、何 昕・大木 博成(玄々化学工業)、眞柄 謙吾(森林資源化学研究領域)
  • 掲載誌
    Journal of Wood Science、日本木材学会、2021年12月 DOI:10.1186/s10086-021-02007-0(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 大平 辰朗
  • 研究担当者
    森林資源化学研究領域 下川 知子

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