研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > クビアカツヤカミキリはサクラよりモモを好む
ここから本文です。
掲載日:2022年5月18日
クビアカツヤカミキリ(写真)は、サクラ、ウメ、モモなどのバラ科樹木に枯死をもたらす外来種です。本種による被害は2012年に国内で初確認され、その後関東から四国までの12都府県に広がっています。現在国内で本種の被害が最も激しいのはサクラ(ソメイヨシノ)ですが、果樹園でのモモの被害拡大も懸念されています。そこでこれら2樹種とクビアカツヤカミキリの関係について定量的に比較しました。
本種の被害を受けたサクラとモモ(日川白鳳など複数品種)の丸太(直径9~81cm)を採集し、割って調べたところ、幼虫によって材内に掘られた孔道の密度はモモの方が高く、蛹室(幼虫が蛹になるために材内に作る部屋)の材積あたりの数はモモがサクラの9倍に達しました(図a)。また丸太から羽化する成虫の数を調べた結果、モモからは同じ材積(木材の体積)あたりサクラの10倍もの成虫が羽化しました(図b)。羽化した成虫を実験室で餌を与えて飼育したところ、体の大きさには差がなかったにも関わらず、モモから羽化した雌成虫の方がサクラから羽化した成虫より多く産卵しました。この様に、モモはサクラよりクビアカツヤカミキリの繁殖に適していることが明らかになりました。
この結果は果樹園のモモが、クビアカツヤカミキリによる被害を受ける可能性が高いことを示しており、現在の被害地周辺にあるモモの産地への侵入を食い止める方策が必要となります。
(本研究は、2022年1月にInsectsにおいて公表されました。)
写真:クビアカツヤカミキリ成虫
図:サクラとモモの被害丸太内のクビアカツヤカミキリの材積あたり蛹室数(a)と、被害丸太から羽化した材積あたり成虫個体数(b)
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.