ホーム > 研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > 不安定な樹液環境に生息する線虫、ブルサフェレンカス・タダミエンシス
ここから本文です。
掲載日:2022年6月20日
2014年、福島・只見町のスジクワガタから見つかった糸状菌食性線虫の一種、ブルサフェレンカス・タダミエンシス(Bursaphelenchus tadamiensis、以下、タダミエンシス)が線虫類を対象にした多様性調査の過程で、京都や滋賀のナラ類樹木の樹液でも確認されました。スジクワガタは樹液を好物とする昆虫であることから、タダミエンシスは樹液を主要な生息場所としていると考えられます。
ブルサフェレンカス属※1はその多くが枯木や土壌という比較的安定した場所に生息していますが、タダミエンシスは、比較的、浸透圧が高く、季節や外気の状態によって変化しやすい樹液という不安定な環境に適応している珍しい存在といえます。近縁の一般的な線虫種との生理学的、遺伝学的な比較が進めば、線虫の環境耐性や適応性について多くの情報が得られると考えています。
また、タダミエンシスはスジクワガタ活動終了後の10、11月も、樹液から採集されたことから、スジクワガタ以外の樹液利用昆虫によっても運ばれる可能性が高いと考えられます。
※1ブルサフェレンカス属 約130種が知られ、松枯れを引き起こすマツノザイセンチュウも属しています。多くは、それぞれ特定の昆虫に運ばれて分散します。
(本研究は2022年6月にNematologyにおいてオンライン公開されました。)
写真:線虫、ブルサフェレンカス・タダミエンシス成虫。
A:頭部(針状の口でカビの菌糸内容物を吸う)、B:雄の尾部(先端部分の形状に種内変異が見られる)
図:線虫、ブルサフェレンカス・タダミエンシス の採集地点。
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.