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タケに含まれる未利用成分を微生物の力でポリマー原料に変換

掲載日:2022年11月7日

タケに含まれる未利用成分「ヒドロキシケイ皮酸類」を主成分とする混合物を抽出し、微生物の力で単一のポリマー原料注1)に変換する技術を開発しました(図)。ヒドロキシケイ皮酸類に着目したタケの利用技術はあまり研究されておらず、今回の成果はタケの利用価値を広げる技術として期待されます。

研究グループは、モウソウチクの茎の粉砕物から既存技術であるアルカリ処理によりヒドロキシケイ皮酸類を主成分とする混合物を抽出し、新しく見出した条件による微生物の代謝機能を活用して2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(PDC)と (4S)-3-カルボキシムコノラクトン(4S-3CML)に変換しました。PDCは、強力な接着剤や耐熱性プラスチックなど様々な機能性素材の原料として利用できることが明らかとなっており注2)、4S-3CMLにもPDCと同様な用途が期待されています。

木材は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンという3つの成分で構成されていますが、タケなどのイネ科植物にはこの主要な3成分に加えて、ヒドロキシケイ皮酸類が特徴的に含まれています。

注1)ポリマー原料:プラスチックなどのさまざまな素材の原料となる物質

注2)過去の研究成果の記事も参照してください。 「木材パルプの製造排液からポリマー原料をつくりだす

本研究は2022年11月Bioresource Technologyにおいてオンライン公開されました。)

図 モウソウチクの茎の粉砕物をポリマー原料に変換
図 モウソウチクの茎の粉砕物からヒドロキシケイ皮酸類を主成分とする混合物を抽出し、単一のポリマー原料に変換。

  • 論文名
    Integrated process development for grass biomass utilization through enzymatic saccharification and upgrading hydroxycinnamic acids via microbial funneling.(微生物代謝を用いたヒドロキシケイ皮酸類の有用物質への変換と酵素糖化を統合した草本系バイオマスの利用プロセスの開発)
  • 著者名(所属)
    鈴木 悠造(森林資源化学研究領域)、阿部 祐里子(東京農工大学)、大塚 祐一郎・荒木 拓馬(森林資源化学研究領域)、上村 直史・政井 英司(長岡技術科学大学)、中村 雅哉(森林資源化学研究領域)
  • 掲載誌
    Bioresource Technology、Vol.363、127836、Elsevier、2022年11月 DOI:10.1016/j.biortech.2022.127836(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター大平 辰朗
  • 研究担当者
    森林資源化学研究領域 鈴木 悠造

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