研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2023年紹介分 > 多様化する大学の森林科学教育、人材育成に向けた新たな課題も
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掲載日:2023年7月3日
森林科学を学べる大学のカリキュラムを調査したところ、新しい教育内容を含む科目が開設されるなど、大学間で教育内容が多様化していました(図-1)。他方、大学間で森林科学として履修する共通科目は少なくなっており、森林科学を幅広く学んだ森林・林業を担う専門的人材をどう確保するかなど、専門教育の新たな課題がみえてきました。
国公私立の4年制大学26大学を対象に、森林科学のカリキュラムについて2021年にアンケート調査を行い、24大学から回答を得ました。その結果、森林科学の幅広い分野の専門科目について、半数の12大学で必修科目として実施していました。選択科目まで含めれば、森林科学の幅広い分野の科目を学習できる大学は8割に上りますが、4つの大学にある一部のコースでは、林産系の科目または造林系の科目などのように、教育内容の範囲が限られたものになっていました(図-2)。
また専門科目の名称を見ると、森林生態管理学、野生動物管理学、里山管理学、森林環境史論、森林ツーリズム論など多様な内容の科目が選択科目として設定されており、森林科学の基盤となる共通の専門教育内容が不明瞭になっていました。
(本研究は、日本森林学会誌において2023年6月に公開されました。)
図-1:大学のカリキュラムにおける森林科学の専門科目
大学の科目では、語学など一般・教養科目と専門科目が開設されています。専門科目には、森林科学の専門科目(森林系科目、林産系科目、実習や概論など総合系科目)と、各大学の学科の特徴を反映した専門科目(構造力学や統計学、造園や農業系など)があります。
図-2:各大学の教育プログラム別にみた森林科学の専門科目開設状況
24大学の森林科学の専門科目を教育プログラム別に整理しました。アルファベットは大学を示します(A~E:規模の大きな国立大学で旧林学科のあった大学、a~t:その他旧林学科のあった国公私立大学、β:新たに森林科学を教えるようになった大学)。同じ大学で複数のコースに分かれている場合はi~iiiを付記して区別しました。森林科学の科目は、森林系科目と総合系科目、林産系科目で、必修と選択別に示しています。グラフの左から必修の科目数が多い順で、左側は森林系と林産系が必修科目にある大学グループ、中央は森林系のみが必修科目の大学グループ、右側は森林系と林産系が必修科目にない大学グループです。
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