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広葉樹の生態に4つの型 ―樹種の多様な森づくりのポイント―

掲載日:2023年7月24日

広葉樹の各樹種はその生態において、(1)小径木(直径約10センチ)時の成長重視、(2)小径木時の生存重視、(3)芽生えや実生(高さ30センチ未満)時の生存重視、(4)中径木(直径約20~30センチ)時の生存重視のいずれかのタイプに分類できることが分かりました。自然の森林ではそれぞれ異なる生態をもつ広葉樹が共存していることを示すもので、樹種ごとの生態の理解が樹種の多様な森づくりに大切なことを示しています。

研究グループは小川試験地(茨城県北茨城市)の冷温帯落葉樹林の主な広葉樹17種について、種子から老木に至るさまざまな成長段階での各個体群の約15年間のモニタリングデータに基づく成長率や生存率の既往の情報から、生態の類型化を試みました。

たくさんの変数の情報をいくつかの指標に要約する主成分分析という手法で解析した結果、樹木の生態を評価する基準として2つの軸を見いだしました(図)。第1の軸(図の横軸)は、小木の成長段階で生存率が高いものの成長が遅い種(ブナ、オオモミジ、サワシバなど)と、逆に成長が早いものの生存率が低い種(コナラ、ミズナラ、クリなど)とを両極端とするものでした。

第2の軸(図の縦軸)は、芽生えや実生の生存率が高いものの中径木の生存率が低い種(ウリハダカエデ、ハクウンボクなど林冠にほとんど到達しない亜高木種)と、その真逆となる種(ミズメ、アカシデなど)とを両極端とするものでした。

本研究は、Ecosphereにおいて2023年6月にオンライン公開されました。)

図:広葉樹17種の生態を2つの軸で類型化

林冠に到達しうる高木種(黄丸)と林冠にほとんど到達することのない亜高木種(緑丸)
図 北茨城の小川試験地に生育する主な広葉樹17種の生態を2つの軸で類型化。この図は、たくさんの変数の情報をいくつかの指標に要約する主成分分析という統計解析の結果にもとづくものです。なお、稚樹の成長や種子散布距離など、樹種の生態の類型化に大きくは寄与しなかった情報の記入は省いています。
掲載論文(DOI:10.1002/ecs2.4579(外部サイトへリンク))の図2を改変しました。

 

  • 論文名
    Does life form affect tree species assembly? A demographic study across the life history of a temperate forest in Japan(生活型は樹木の群集集合規則に影響するか?日本の温帯林での樹木生活史全般にわたる個体群研究)
  • 著者名(所属)
    Pavithra Rangani Wijenayake(森林総研特別研究員)、正木 隆(研究ディレクター)、柴田 銃江(森林植生研究領域)、久保田 康裕(琉球大)
  • 掲載誌
    Ecosphere、14(6)、2023年6月、esa、 DOI:10.1002/ecs2.4579(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 正木 隆
  • 研究担当者
    研究ディレクター 正木 隆

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