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掲載日:2023年8月31日
福島第一原発事故によって放出され、スギとコナラに取り込まれた放射性セシウムの「動きやすさ」について、葉、枝、外樹皮など雨水と接触しやすい部位別に評価し、樹種間及び部位間で大きな違いがあることを明らかにしました(図)。
森林の樹木の葉や枝などに含まれる放射性セシウムは、雨水に接した際に一部が溶け出します。そしてこの放射性セシウムは、雨水と共に土壌に入り込み、根から再度樹木に吸収される、というサイクルが起きています。このようなサイクルの存在は、樹木の汚染の長期化、森林内の放射性セシウム分布の空間的なばらつき、さらには将来予測の困難さの大きな要因の一つです。本研究では福島の複数の森林域で、福島の主要樹種であるスギとコナラについて、葉や枝、外樹皮といった雨水と接触しやすい樹木外側の部位を中心にサンプリングを行いました。そして、これらのサンプルに対して純水などを使用した抽出実験を行い、中に含まれる全放射性セシウムのうち、水に溶けやすく動きやすい形態の割合を、「動きやすさ」の指標として化学的に評価しました。
実験の結果、放射性セシウムの動きやすさは葉と枝で同程度である一方、スギ外樹皮については極端に動きにくいことが明らかになりました。またスギとコナラの同じ部位同士を比較すると、コナラの放射性セシウムの方が動きやすく、より活発な放射性セシウムのサイクルが起きる可能性があることが明らかになりました。この結果は、将来予測などを行う上で、非常に重要な基礎データとなるものです。
(本研究は、Scientific Reportsにおいて2023年6月にオンライン公開されました。)
図:各サンプル中の全放射性セシウム量に対する、純水によって抽出された放射性セシウムの割合の平均値。値が大きいほど、中に含まれる放射性セシウムが動きやすいことを示す。エラーバーは標準偏差を表す。サンプル量の都合上、樹種によっては分析できていない部位もある。
今回得られた結果は、あくまで実験室での抽出実験によって得られたものであることには注意。例えば、実験条件を揃えるために、サンプルの乾燥や粉砕を行っている。実際の森林では、樹木が雨水に接した際、放射性セシウムがこの割合で直ちに溶け出すわけではない。
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