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掲載日:2023年12月4日
針葉樹天然林からスギ人工林に転換すると、土壌中の微生物相が変化し、樹木の成長に必要な無機態窒素注1) が増加することが分かりました。
四万十川流域の森林にはモミを主とする天然生針葉樹林が広く分布しますが、モミは外生菌根菌注2) と共生し、スギはアーバスキュラー菌根菌注3) と共生するため、スギの人工林化は土壌中の微生物の組成を変化させることが予想されます。そこで私たちの研究グループは、樹齢150年以上のモミが優占する天然林と50年生スギ人工林について、土壌微生物の群集組成と無機態窒素量を調査し比較しました。その結果、スギ人工林土壌は、モミ天然林土壌に比べて外生菌根菌が少なく、無機態窒素量が多いことが分かりました。(図1)。また、この地域の中で土壌pHが5.5とやや高い場所のスギ人工林土壌では、モミ天然林土壌に比べてアンモニア酸化アーキア注4) が多く、硝酸態窒素が多いことが明らかになりました。
今回の結果は土壌微生物の組成がモミとスギという樹種に依存すること、天然林の人工林化が土壌微生物組成の変化を通じて樹木の成長に必要な養分である無機態窒素を増加させることを示しています。
注1) 無機態窒素:植物が主に吸収することができるアンモニム態と硝酸態の窒素。
注2) 外生菌根菌:植物の根と菌類との共生体である菌根のグループ。マツ科、ブナ科植物などと共生する。
注3) アーバスキュラー菌根菌:別の菌根のグループ。多くの種類の樹木と共生する。
注4) アンモニア酸化アーキア:硝化の第一段階であるアンモニアから亜硝酸への反応を担う古細菌。
(本研究は、Applied Soil Ecologyにおいて2023年11月にオンライン公開されました。)
図1:針葉樹天然林のスギ人工林化による土壌微生物群集組成と無機態窒素量の変化
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