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ササの開花促進遺伝子は前年秋から活発化

掲載日:2025年3月7日

数十年から100年以上にわたる生涯に一度だけ開花するササは、開花前年の秋から開花の準備に入ることがわかりました。開花時期の予測が困難なササにおいて、2023年に北海道各地で起きたような広域一斉開花の誘因特定につながる成果です。

森林総合研究所北海道支所の実験林内において、2017年に小面積で部分開花したササのうち開花しなかった稈(かん)*) の葉から遺伝子分析試料を採取しながら観察を続けました。そのうち3本の未開花稈では、開花を促進する遺伝子の発現量が2021年9月から高くなり、高いまま積雪に埋まり、翌2022年の雪解けとともに開花しました。

日本列島の森林に広く分布するササは地下茎による「栄養繁殖」で分布を広げた後、一度だけ開花して枯れる「一回結実性植物」です。その一斉開花は予測がほぼ不可能なことから、神秘的な現象として凶兆または吉兆ともいわれてきました。ササは前触れなく花が咲くため開花を引き起こす要因の解明が困難でしたが、本研究で開花前〜開花に至る分析試料が揃い、開花促進遺伝子の発現量が明らかになりました。

*) 稈(かん):竹やササ、稲などイネ科植物の中空の茎のことで、ササを数える単位としても使われます。

本研究は、Bamboo Journalにおいて2025年2月に公開されました。)

 

写真:北海道支所の実験林で雪解け直後に開花したササの花
写真:北海道支所の実験林で雪解け直後に開花したササの花

図:2021年の開花促進遺伝子の発現量
図:2021年の開花促進遺伝子の発現量。1〜2は非開花、3〜5は2022年5月に開花した。

 

  • 論文名
    Expression profile of the FLOWERING LOCUS T (FT) homolog during the 5 years before the flowering of the Sasa kurilensisSasa senanensis complex(チシマザサ ー チマキザサ複合体の開花前5年間におけるFLOWERING LOCUS T (FT) ホモログの発現動態)
  • 著者名(所属)
    北村 系子(北海道支所)
  • 掲載誌
    Bamboo Journal、No.33-3:23~31 2025年2月
  • 予算区分:公益財団法人秋山記念生命科学振興財団2023年度研究助成
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 佐藤 保
  • 研究担当者
    北海道支所 北村 系子

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