研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2025年紹介分 > 二酸化炭素と酸素の混合ガスを使用することで桃剪定枝のガス化効率を向上
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掲載日:2025年3月28日
桃の剪定(せんてい)枝をガス化炉で気体燃料に変換する際、二酸化炭素(CO2)と酸素(O2)の混合ガスを使用すると、効率的にガス化反応が進むことを明らかにしました。
研究グループは、小型固定床ガス化炉(図)という装置を用い、CO2とO2の混合ガスを利用することで桃の剪定枝が効率的にガス化できる可能性を探りました。その結果、ガス化で生成する炭化物(チャー)のガス化速度が、O2を添加することで向上ことを明らかにしました。また、混合ガス中のCO2の濃度を高めると、ガス化によって生成する一酸化炭素の量や炭素転換率(注1)が上昇し、さらに水蒸気を追加して加えることで、生成ガス中の水素(H2)の生成量が増加することを明らかにしました。
国内に広く潜在する果樹の剪定枝などの木質バイオマスは炭素転換効率が低いため、ガス化熱電併給装置(注2)などでの燃料利用が限定されています。そのため、本論文の研究成果は、木質バイオマスを効率的にガス化するプロセス設計において重要な指針となり、地域の果樹剪定枝を再生可能エネルギー源として広く活用する可能性につながります。
(注1):炭素転換率=ガス化反応により、木質バイオマスなどの燃料中に含まれる炭素原子がガス状物質に変換された割合
(炭素転換率)=(生成ガス中に含まれる炭素原子の量)/(原料に含まれる炭素原子の量)
(注2):ガス化熱電併給装置=木質バイオマスをガス化して発生する可燃性ガスを、ガスエンジンなどの内燃機関で回転動力に変換し、発電機を稼働させて電力を供給するとともに、発生する熱を水冷によって温水として回収し、熱と電気の両方を供給できる装置
(本研究は、Energy & Fuelsにおいて2024年9月に公開されました。)
図:小型固定床ガス化炉内の反応
(ガス化炉では、燃料(木質バイオマスなど)の乾燥、熱分解、燃焼、ガス化の4つのプロセスが熱的にバランスを保ちながら同時に進行します。燃焼プロセスでは、原料の一部を燃焼させることで熱を発生させ、この熱によって乾燥、熱分解、ガス化に必要な反応熱が供給されます。これらの一連のプロセスの中で、熱分解で生成した炭化物(チャー)のCO2ガス化反応は最も反応速度が遅いため、この反応によって全体の反応速度が決まります。本論文では、空気やO2を加えることでチャーのガス化反応速度が向上することを明らかにしました。反応速度や炭素転換率を向上させるCO2/O2ガス化について評価を行うとともに、最適な反応速度モデルの提案も行いました。)
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