研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2025年紹介分 > 積雪地域の森林伐採、田植え期の水資源量を減らさず
更新日:2025年4月22日
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掲載日:2025年4月22日
積雪地域の森林を伐採しても、融雪期後半(この地域では4月中旬~5月中旬)の水流出量は減少しないことが、山形県の試験地における長期観測データの解析から分かりました。伐採によって融雪期全体(3~5月)の水流出量はむしろ増加しており、雪融けの早まりによって田植え期(5月~6月中旬)の水資源量が減るのではないかという懸念の払しょくにつながる知見です。
研究チームは、山形県北部の豪雪地帯にある釜淵森林理水試験地(写真)で長期間にわたり観測した森林保全流域(基準流域)と伐採流域の水流出量を比較し、伐採による影響を解析しました。伐採流域では、30年ほどの間、厳冬期の1月下旬から融雪盛期(3月下旬~4月中旬)にかけて水流出量が基準流域より多くなる傾向がありましたが、田植え期と重なる融雪期後半については基準流域と同等でした(図)。
森林は、降ってきた雪の一部を樹冠(枝や葉)で遮断し、水蒸気として大気中へ戻す機能があります。そのため、森林を伐採すると、地表の積雪量増加にともない雪融け水の流出が増えることが知られています。しかし、積雪面への日射量増大により雪融け開始も早まるため、融雪期後半では逆に水流出量が減少するのではという懸念がありました。
このほか、融雪期の最大瞬間流量は伐採後に基準流域の約1.1倍となり、洪水リスクがやや高まるものの、苗木植栽後10~20年で元に戻ることも分かりました。
(本研究は、水利科学において2025年2月に公開されました。)
写真:1970年ころの釜淵森林理水試験地(森林総研所蔵)
2号沢はスギ植栽後10年ほど経過、3号沢は皆伐直後。
図:基準流域および伐採流域(2号沢)の旬流出量の経年変化
伐採流域については、基準流域との差を示した(*の箇所は統計学的に違いあり)。
図の流出量は複数年の平均値である。
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