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プレスリリース
平成28年10月14日
北海道大学総務企画部広報課
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 北海道大学 酪農学園大学 森林総合研究所 東京農工大学

ヒグマ、エゾシカ、キタキツネなど北海道に生息する哺乳類の活動時間を明らかに:赤外線カメラを用いた長期調査

研究成果のポイント

  • 赤外線カメラを用いることで、直接観察の難しい野生動物の日周活動性を8種同時に解明。
  • 哺乳類の日周活動性は夜行型、昼行型、薄明薄暮型、一日中型の4つに明確に区分。
  • 日周活動性は、薄明薄暮型や一日中型では季節変化する一方で、昼行型や夜行型では季節変化しないことが判明。

研究成果の概要

北海道大学大学院地球環境科学研究院の池田 敬日本学術振興会特別研究員(現:国土交通省国土技術政策総合研究所研究官)及び小泉 逸郎准教授、北海道大学大学院環境科学院博士後期課程の内田 健太氏、森林総合研究所の松浦 友紀子主任研究員及び高橋 裕史チーム長、酪農学園大学の吉田 剛司教授、東京農工大学の梶 光一教授による研究チームは、ヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、ユキウサギ、ホンドテン、アライグマ、タヌキ、エゾリスが明確な日周活動性を示すこと、一部の哺乳類は日周活動性を季節的に変化させることを、カメラトラップ調査による長期モニタリング(延べ13,279枚の撮影写真)により明らかにしました。本研究は、膨大なデータで北海道を代表する哺乳類の基礎生態を明らかにするとともに、野生動物管理にも大きく役立つ知見を提供しました。

本研究成果は、環境省環境研究総合推進費(4D-1103)並びに日本学術振興会特別研究員奨励費(14J01402)のデータを用いて実施され、2016年10月12日にPLOS ONE誌に発表されました。

論文発表の概要

研究論文名:Seasonal and diel activity patterns of eight sympatric mammals in northern Japan revealed by an intensive camera-trap survey(カメラトラップ調査により明らかにされた北日本で同所的に生息する8種の哺乳類における日周活動性の季節変化)
著者:池田 敬1、内田 健太2、松浦 友紀子3、高橋 裕史4、吉田 剛司5、梶 光一6、小泉 逸郎12
1北海道大学大学院地球環境科学研究院、2北海道大学大学院環境科学院、3森林総合研究所北海道支所、4森林総合研究所関西支所、5酪農学園大学、6東京農工大学)
公表雑誌:PLOS ONE
公表日:日本時間(現地時間)2016年10月13日(木曜日)午前3時(米国東部時間2016年10月12日(水曜日)午後2時)

研究成果の概要

(背景)

一般的に、陸生哺乳類の日周活動性(一日の活動パターン)は、夜行型(主に夜間に活動)、昼行型(主に昼間に活動)、薄明薄暮型(主に日の出・日の入りに活動)、一日中型(一日中活動)の4つに分かれます。従来、生物の基礎情報とされる日周活動性の収集は、直接観察や電波追跡により明らかにされてきました。しかしながら、こうした手法は調査や捕獲に膨大な労力や金銭コストが掛かり、森林内では継続した直接観察が難しく、長期的なデータを収集することは困難でした。また、観察者の存在や捕獲行為そのものが動物の行動に与える影響を排除することができないという問題点もあります。これらの問題を解決する手法として、動物の体温と周辺気温の違いから、自動的に動物の写真を撮影する赤外線カメラを用いたカメラトラップ調査が注目されています。しかし、カメラトラップを用いた研究でも、同所的に生息する複数の野生動物の日周活動性とその季節変化を明らかにした研究はありませんでした。

そこで研究チームは、北海道支笏湖東岸で2年間にわたるカメラトラップ調査を行い、森林内では直接観察の難しい大小様々な野生動物(ヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、ユキウサギ、ホンドテン、アライグマ、タヌキ、エゾリス)の日周活動性を定義し、それらの季節変化を調べました。

(研究手法)

研究チームは、赤外線カメラ30台を使用し、2012年6月から2014年6月にかけて北海道支笏湖東岸の調査地域で調査を実施しました。次に、1~3月を冬季、4~6月を春季、7~9月を夏季、10~12月を秋季となるように季節を区分して、対象とした哺乳類を撮影した13,279枚の撮影時刻から各季節の日周活動性を調べました。

(研究成果)

解析の結果、対象とした哺乳類8種は4つの日周活動性に区分することができました。エゾリスは昼行型、タヌキとアライグマは夜行型、エゾシカとユキウサギは薄明薄暮型、ヒグマ、キタキツネ、ホンドテンは一日中型を示しました(図1)。

昼行型と夜行型の種は季節による日周活動性の変化は見られませんでしたが、一方で、薄明薄暮型と一日中型では日周活動性の季節変化が観察されました。例えば、エゾシカは春季から秋季にかけて薄明薄暮型を示しますが、冬季では一日中型に変化し、ユキウサギは春季と夏季では薄明薄暮型を示しますが、秋季と冬季では夜行型に変化することが明らかになりました(図2)。さらに、一日中型のホンドテンも冬季から夏季にかけて一日中型を示した一方で、秋季は夜行型に変化しました。

本研究は、北海道に生息する代表的な哺乳類における基礎的な情報を提供し、日周活動性とその季節変化が種によって異なることを指摘しました。また本成果は、個体数管理が必要な在来種や外来種の管理、外来種による影響を受ける在来種の保全にとって重要な情報となります。

(今後への期待)

今後、人間が各種の日周活動性に与える影響を調べ、各地域における変化を明らかにすることで、より具体的な日周活動性の情報を収集することが期待されます。

また、各種の生息密度や分布などの情報を調べることで、捕食被食関係や競争関係を明らかにすることができると考えられます。

 

お問い合わせ先

所属・職・氏名:北海道大学大学院 地球環境科学研究院 准教授 小泉 逸郎(こいずみ いつろう)(外部サイトへリンク)

所属・職・氏名:国土交通省 国土技術政策総合研究所 研究官 池田 敬(いけだ たかし)(外部サイトへリンク)

所属・職・氏名:森林総合研究所 北海道支所 森林生物研究グループ 主任研究員 松浦 友紀子(まつうら ゆきこ)

所属・職・氏名:酪農学園大学 環境共生学類 教授 吉田 剛司(よしだ つよし)

所属・職・氏名:東京農工大学大学院 農学研究院 教授 梶 光一(かじ こういち)

 

 

 

 

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お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科

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電話番号:029-829-8377

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