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更新日:2008年8月21日

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平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震によって発生した山地災害(第2報)

独立行政法人森林総合研究所

本見解は8月15日の段階のものであり、今後調査の進み具合により変わる可能性があることをご承知置きください。

1. 崩壊と地質との関連

今回の地震により発生した崩壊と地質との関係を明らかにするため、次の3つのデータをGISレイヤーとして作成し、重ね合わせを行いました。

  1. 崩壊分布図
  2. 震源の分布図
  3. 地質図

結果を図.1に示します。(図をクリックすると拡大します。)

図1.に基づき、崩壊と地震・地質との関連を整理すると、以下のようになります。

  1. 今回の地震による崩壊は、主に凝灰岩類の分布域で、また、地質の境界付近で発生している例が多い。
  2. 栗駒山体を構成する栗駒安山岩での崩壊は少数である。

図1(JPG:893KB)

凡例

凡例1 本震の震源 凡例2 余震の震源 凡例3 大規模な崩壊・地すべり 凡例4 小規模な崩壊

地質図の凡例(色別の地質概要)については産業技術総合研究所地質調査総合センターシームレス地質図(原典)(外部サイトへリンク)を参照願います。 

図1. 震源、地質と崩壊との関係 

 

2. 崩壊と地形との関係

崩壊と地形との関係を明らかにするため、次の3つのデータをGISレイヤーとして作成し、重ね合わせを行いました。

  1. 崩壊分布図
  2. 震源の分布図
  3. 地形図

結果を図.2に示します。(図をクリックすると拡大します。)

図2に基づき、崩壊と地震・地形との関連を整理すると、以下のようになります。

  1. 今回の地震による崩壊は、主に火山噴出物で構成された台地を下刻している河道の側壁の急傾斜面で発生している例が多い。
  2. 栗駒山体(栗駒安山岩)での崩壊は少数であるが、侵食により下刻したガリーの側壁で崩壊が発生している。
  3. 本震の震源から離れた、一迫(いちはざま)川上流部の河道沿いの急斜面に、大規模な崩壊が数多く発生している。  

図2(JPG:3,467KB)

凡例

凡例1 本震の震源 凡例2 余震の震源 凡例3 大規模な崩壊・地すべり 凡例4 小規模な崩壊

図2. 崩壊と地形との関係 

 

3. 崩壊と地震(本震・余震)との関係

崩壊と地震との関係を明らかにするため、余震の位置の緯度・経度別グラフを作成し、図1・2に重ね合わせました(図3)。この結果下記のことがわかりました。

  1. 余震の震源は、南西に向かって浅く、北東に向かって深くなる。
  2. 一迫川上流域は、余震の浅い領域に位置する。

したがって、余震域の浅い部分と一迫川上流に見られる多数の崩壊には、大きな関連があると思われます。余震の分布域が地震による地下部の破壊面に一致するという条件が成り立つとすれば、一迫川上流域で強い地震動により多数の崩壊が発生したことが推察されます。 

図3(JPG:612KB)

図3.崩壊と余震との関係

 

注:

なお、図1~3の作成は下記a~dによって行いました。

a.地質図については、以下を使用しました。

  1. (独)産業技術総合研究所地質調査総合センター (編) (2007) 20万分の1日本シームレス地質図データベース 2007年5月12日版.
  2. (独)産業技術総合研究所研究情報公開データベースDB084,産業技術総合研究所地質調査総合センター.

b.地形図については、以下を使用しました。

  1. 25000分の1地形図

c.震源については、以下を使用しました。

  1. (独)防災科学技術研究所、強震ネットワークK-NET、http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/(外部サイトへリンク)

d.崩壊地については、以下から位置座標を再録して記載しました。

  1. アジア航測株式会社、平成20(2008)年岩手・宮城内陸地震崩壊・地すべり等判読図

以上の各資料をGISのレイヤーとして重ね合わせて表示しています。

掲載にあたりご快諾いただきました、(独)産業技術総合研究所、同地質調査総合センター、(独)防災科学技術研究所、(株)アジア航測に感謝申し上げます。