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樹幹流の放射性セシウム起源、外樹皮から葉に変化

掲載日:2024年3月25日

福島県川内村の落葉広葉樹で樹幹流(幹を伝って流れる雨水)に溶け出している放射性セシウム(137Cs)の主な起源が外樹皮から葉へと変化していることが昨年と一昨年に行った採取分析から分かりました。モデルによる長期予測がいまだ困難(*)である幹材の137Cs濃度の予測精度向上につながる発見です。

研究チームは2022年秋と2023年初夏、川内村内で計10本の落葉広葉樹(コナラ、ミズナラ、クリ、サクラ)の葉、外樹皮とともに樹幹流を採取(写真)しました。それぞれの137Cs濃度の関係を調べた結果、樹幹流と正の相関が確認できたのは葉だけで、外樹皮では確認できませんでした。

2011年3月の福島第一原発事故発生時には落葉広葉樹は落葉していたため、137Csは主に外樹皮に付着したと考えられます。2018年までに採取した試料による137Cs濃度の関係から、樹幹流に含まれていた137Csの多くは外樹皮から溶け出したものであると考えられていました。

10年以上経過した現在では外樹皮の137Cs濃度は大幅に減少したのに対し、毎年入れ替わる葉の137Cs濃度は概ね一定のままです。そのため外樹皮から樹幹流に溶け出す137Csが減少し、葉から溶け出した137Csの割合が高くなったと考えられます。

(*)以下を参照してください。
木材の放射性セシウム濃度の予測幅は時間とともに増大する ―6つの最新モデルで事故後50年間を予測―

本研究は、Journal of Environmental Radioactivityにおいて2024年1月にオンライン公開されました。)

写真:樹幹流サンプラー
写真:樹幹流サンプラー
オレンジ色の薬剤を塗布している部分が外樹皮の採取位置
 

  • 論文名
    A pilot study of radiocesium activity concentration in the stemflow of deciduous broad-leaved trees: Its relationship with leaves and outer bark as of 2022–2023(落葉広葉樹の樹幹流の放射性セシウム濃度の予備試験:2022-2023年現在の葉および外樹皮との関係)
  • 著者名(所属)
    坂下 渉(震災復興・放射性物質研究拠点)、今村 直広(北海道支所)、阪田 匡司(震災復興・放射性物質研究拠点)、常岡 廉(東京大学)、篠宮 佳樹(震災復興・放射性物質研究拠点)
  • 掲載誌
    Journal of Environmental Radioactivity、273、107385、2024年1月 DOI:10.1016/j.jenvrad.2024.107385(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 玉井 幸治
  • 研究担当者
    震災復興・放射性物質研究拠点 坂下 渉

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