おさらいワイヤロープ(1)
ワイヤロープの構造
ワイヤロープとは
ワイヤロープとは硬鋼線あるいはピアノ線でを材料にしたワ イヤで撚られたロープのことです。
さて、ここでワイヤロープの構造を見てみましょう。現場で は「ワイヤ」と言うのがワイヤロープを指すこともあるようですが、厳密には「素線」のことです。まず、素線を撚り合わせることによってストランド(小縄)を作り、心綱(しんづな)を中心にストランドを撚り合わせるとワイヤロープが完成します。また、心綱も「綱」ですから繊維あるいは線材が撚り合わされて作られています。このようにワイヤロープは「撚る」ことによって全体の形を保っているのです。ワイヤロープの性質を知るためには素線という細いワイヤを撚り 合わせて作られていることが大変重要となります。
心綱に撚り合わされるストランドの数はロープの性能に大きく影響します。通常は最も形状的にバランスの良い6本の物が大半を占めていますが、心綱の無いガードケーブル用の3ストランドのロープ、柔軟性に優れたエレベータ用の8ストランドのロープも生産量としては多いようです。また、他にはストランドを多層にしたロープや、非自転性ロープというストランドが3本か4本のワイヤロープもあります。
話は変わりますが、世の中には撚らないワイヤロープも存在します。実は撚り合わせたロープの強度は、元の線材(素線)の強度を合わせたよりも弱くなってしまいます。このことは全てのロープに共通することで、撚る ことにより力のかかる方向と、線材の配置に一定の角度が付いてしまうことに原因があります。明石海峡大橋など吊り橋のメインケーブルのワイヤロープでは、素線の強度を100%発揮させるため、PWS(パラレルワイヤストランド)という断面形状が6角形の撚られていないストランドを束ねて作られています。しかし、ロープとして形を保つために外周を別の素材で被覆する必要が生じます。繊維ロープの中にも外側にジャケットと呼ばれる筒状の織物で荷重を支える繊維 をまとめたものがあります。ソフトタイプの繊維スリングや登山用のザイルがこのような構造を持っています。
ワイヤロープの特長は一般の鉄鋼二次製品に比べて、次の4点が挙げられます。2.柔軟性に富む
3.耐衝撃性に優れている
4.長尺物が得られる
また、ロープの中では伸びが少ないことも長所として挙げられます。ロープを用いて吊り上げたり、けん引したりする場合は伸びの多いロープでは引っ張ってもロープ自身が伸びるだけで力が伝わらないことになります。力を掛けても伸びが少ないワイヤロープがあってこそ、集材機の力を離れた場所へ伝えたり、効率よく木材を運搬することが可能となるのです。