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更新日:2016年9月28日

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土壌炭素モデリングは気候変動を緩和させる森林管理に役立つ

土壌は地球上で主要な炭素貯留の場です。しかし気候変動に与える影響は未だ十分には解明されていません。最近の研究により、土壌の炭素蓄積量やその変化は土壌の肥沃度や土壌の組成の影響を組み込むことでより正確に予測できることが明らかになってきました。土壌から放出される二酸化炭素の量を正確に把握することは、気候変動緩和という観点も考慮に入れたより適切な森林管理を考える上で重要です。

気候変動と土壌炭素との間の相互作用を考えるためには、土壌炭素の広がりと地域的な変動についての情報が重要です。現在用いられている土壌炭素変動の予測モデルはまだ信頼性がそれほど高くなく、気候変動により放出される二酸化炭素の量を正確に捉えることができていません。

本研究では、フィンランドの自然資源研究所(NaturalResources Institute Finland : Luke)、スウェーデンのスウェーデン農業科学大学(Swedish University of Agricultural Sciences : SLU)、そして日本の森林総合研究所の共同研究として、スウェーデンの土壌インベントリーデータ(全国の土壌炭素の分布を何千点も調べたデータ)を解析し、代表的な土壌炭素モデルの予測と比較しました。

現在の土壌炭素モデルの問題点の解明

この研究は、土壌炭素モデルは一般に見られるやや貧栄養または中程度の肥沃度の地域では正確に土壌炭素を予測できる一方で、肥沃度の高い土壌や粒子の細かい土壌の地域においてはモデルが土壌炭素蓄積量を過小に見積もることが明らかになりました。

モデルによる土壌炭素蓄積量の予測は、土壌に入ってくる落ち葉などの有機物の量と質に依存します。このことから、肥沃度の高い土壌や粒子の細かい土壌の土壌炭素まではモデルは適切に表現できないのではないかと考えられました。

―「モデルに長期的な影響も組み込むことで、モデルは正確に炭素循環を予測できるようになり、私たちは信頼できる予測が提供できるようになります」(本研究の代表研究者であるフィンランド自然資源研究所の主任研究者のアレクシー・レートネン氏)

本件に関わるより詳しい情報については:

研究担当者(国内):森林総合研究所 立地環境研究領域(国際連携・気候変動研究拠点併任) 主任研究員 橋本昌司

広報担当者(国内):森林総合研究所 広報普及科 広報係 Tel:029-829-8372 E-mail:kouho@ffpri.affrc.go.jp

研究担当者(フィンランド):Boris Ťupek研究員, Natural Resources Institute Finland, Tel.+358 29 532 2416, E-mail:Boris.Tupek@luke.fi

研究担当者(フィンランド):Aleksi Lehtonen主任研究者, Natural Resources Institute Finland, Tel.+358 29 532 2362, E-mail:aleksi.lehtonen@luke.fi

発表論文:

BorisŤupek, Carina A Ortiz, Shoji Hashimoto, Johan Stendahl, Jonas Dahlgren, ErikKarltun, and Aleksi Lehtonen (2016).

Underestimation of borealsoil carbon stocks by mathematical soil carbon models linked to soil nutrientstatus(外部サイトへリンク). Biogeosciences, 13, 4439–4459.

フィンランドの自然資源研究所

リンク先URL:https://www.luke.fi/en/news/soil-modelling-to-help-curb-climate-change/(外部サイトへリンク)

スウェーデン農業科学大学

リンク先URL:https://internt.slu.se/en/nyheter-originalen/2016/9/soil-modelling-to-help-curb-climate-change/(外部サイトへリンク)

 

お問い合わせ

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