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プレスリリース平成28年3月16日
国立研究開発法人森林総合研究所

地球上の土壌から放出される二酸化炭素のマップを作成世界各地の最新の観測データセットに基づく推定

ポイント

  • 陸域土壌から放出される二酸化炭素量は化石燃料による放出量の10倍以上と考えられており、地球上の炭素の動きの中で大きな割合を占めています。
  • 過去50年間に世界各地で得られた1600地点を超える観測データを含む最新のデータセットを用いてモデルを構築し、陸域土壌から放出される二酸化炭素の全球用語解説1マップを作成しました。
  • 本研究で得られた値は、アメリカの研究グループが2010年にNature誌に報告した値より、6%程度小さい値となりました。
  • 気候変動による気温上昇の影響を受け放出量が増加傾向にあることも示唆されました。
  • 本研究で得られた推定値は、地球上の炭素循環についての理解を深め、今後の気候変動の予測精度向上に貢献すると考えられます。

概要

国立研究開発法人森林総合研究所(以下「森林総研」という)は、国立研究開発法人国立環境研究所、ドイツ連邦共和国マックスプランク研究所との共同研究により、土壌から大気へ放出される二酸化炭素の全球マップを構築しました。

陸域土壌から大気へ放出される二酸化炭素量は、化石燃料による放出量の10倍以上と考えられており、地球上の炭素の動きの中で大きな割合を占めています。しかしながら、全球で推定を行った研究は限られており、また近年の観測研究で蓄積されてきた観測データに基づいた推定は少なく、地球上の土壌から放出される総量はよく分かっていませんでした。本研究では、過去50年間に世界各地で得られた1600地点を超える観測データを含む最新のデータセットを用いてモデルを構築し、全球での分布を推定しました。その結果、2010年にNature誌に報告された先行研究よりも全球の陸域からの放出量は6%程度小さい値となりました(2008年の推定値と比較)。また、経年変化は気候変動による気温上昇の影響を受け、放出量が増加傾向にあることも示唆されました。本研究で得られた最新の推定値は、地球上の炭素循環についての理解を深め、今後の気候変動の予測精度の向上に役立つことが期待されます。

 

予算:文部科学省科学研究費(No. 24510025)

背景

【地球上の炭素循環の中で土壌から大気への放出は非常に大きい】

地球上では、大気、海洋、陸域(植生・土壌)の間で、炭素が循環しています(図1)。その炭素循環用語解説2を化石燃料の消費や森林破壊によって人間がかく乱し、地球温暖化などの気候変動が起こっています。落ち葉などの分解や根の呼吸を起源とする「土壌から大気へ放出される二酸化炭素」は、地球上の炭素の動きの中で、化石燃料による放出の10倍以上と大きな割合を占めていると考えられています。

【全球での総放出量は未だによく分かっていない】

地球上の炭素循環の中で重要な役割を占めている土壌からの二酸化炭素の放出ですが、全球での推定を行った研究は限られており、また十分な観測データに基づいた推定は少なく、全球での総放出量はよく分かっていませんでした。

【グローバルな観測データに基づいた推定が必要】

1990年代頃から世界の各地で土壌から放出される二酸化炭素の観測研究が行われ、そのデータをとりまとめたグローバルな観測データベースが構築されてきました。また今後の気候変動を予測するために開発されている地球システムモデル用語解説3の精度向上のためにも、世界各地の観測で得られる情報を最大限取り込んだ「土壌から放出される二酸化炭素の全球マップ」が必要とされていました。

内容

  • 過去に世界各地で行われた、土壌から放出される二酸化炭素に関する観測データベースを解析し(図2)、気温や降水量を入力条件とするモデルを構築しました。
  • そのモデルを用いて、全球の陸域を0.5°×0.5°の解像度で分割し、土壌からの二酸化炭素の放出量を推定しました。(図3)。
  • 全球での総放出量の推定値は炭素換算で91ペタ(1015)グラム(1965年から2012年までの平均値)となりました。これは、2010年にNature誌に報告された先行研究よりも6%程度小さい値です(2008年の推定値と比較)。この先行研究との差は、化石燃料の消費で毎年大気に放出される二酸化炭素量に匹敵する量です。
  • 気候変動による気温上昇の影響を受け、放出量が増加傾向にあることも示唆されました。
  • ただし、本研究は土壌から放出される量を対象にした研究であり、土壌炭素蓄積量の減少を直ちに意味するものではありません。

今後の予定・期待

作成された放出量マップは、地球の陸域のみならず地球全体の炭素循環を高精度で推定するための基礎的な情報となります。

地球全体の気候や炭素循環を取り扱う「地球システムモデル」の構築や検証に利用されることが期待されます。

地球上の炭素循環についての理解を深め、今後の気候変動の予測精度向上に役立つことが期待されます。

 

用語の解説

1. 全球
地球全体を対象にしたもの。今回の研究では、陸域の土壌を対象にしている。

2. 炭素循環
地球上では、人間活動が活発化する以前から大気、海洋、陸域(植生・土壌)の間で、炭素が循環しています(図1)。人間活動によって、化石燃料の消費や森林破壊などの土地利用変化が起こり、地球上の炭素循環がかく乱され、気候変動(地球温暖化など)が引き起こされていると考えられています。

3. 地球システムモデル
気候変動を予測するために、地球の陸域・大気・海洋の炭素循環や気候をコンピュータで再現し、現象の理解や将来予測のシミュレーションを行うモデルです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)などで活用されています。

問い合わせ先など

 研究推進責任者 : 森林総合研究所 研究コーディネータ 松本 光朗

 研究担当者 : 森林総合研究所 立地環境研究領域 主任研究員 橋本 昌司

 広報担当者 ; 森林総合研究所 企画部 広報普及科長 宮本 基杖
 電話番号 : 029-829-8135
  FAX番号 : 029-873-0844

 

 

 

 

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お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科

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